特別養護老人ホーム(特養)で医療連携の体制を整えると、複数の加算が算定できます。この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)に置かれている加算だけを使って、入所定員別の年間見込み額を計算します。
対象になるのは3つの加算
| 加算 | 単位数 | 単位の付き方 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ | 6単位 | 1日につき |
| 看護体制加算(Ⅰ)ロ | 4単位 | 1日につき |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ | 13単位 | 1日につき |
| 看護体制加算(Ⅱ)ロ | 8単位 | 1日につき |
| 協力医療機関連携加算 | 50単位または5単位 | 1月につき |
| 配置医師緊急時対応加算 | 325・650・1,300単位 | 1回につき |
イとロは入所定員で分かれます。イは入所定員30人以上50人以下、ロは51人以上です。
はじめに名称をひとつ整理しておきます。「夜間看護体制加算」は特定施設入居者生活介護の項目で、特養にはありません。特養の夜間の医療対応に対応するのは配置医師緊急時対応加算です。
要件の確認
看護体制加算(Ⅰ)は、常勤の看護師を1名以上配置していることが中心の要件です。
看護体制加算(Ⅱ)はこれに加えて、看護職員の数が常勤換算方法で入所者の数が25またはその端数を増すごとに1以上であり、かつ人員基準で置くべき看護職員の数に1を加えた数以上であること、そして24時間連絡できる体制を確保していることが求められます。24時間連絡体制は、自施設の看護職員によるほか、病院・診療所・指定訪問看護ステーションの看護職員との連携によっても確保できます。
協力医療機関連携加算は、協力医療機関との間で入所者の同意を得て病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催している場合に算定します。協力医療機関が相談対応・診療・入院受入の3要件を満たしていれば50単位、それ以外は5単位です。
配置医師緊急時対応加算は、配置医師が施設の求めに応じて訪問し診療を行い、その理由を記録した場合に算定します。看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は算定できません。
入所定員50人の試算
1単位10円(その他地域)で計算します。地域区分により単価は上がるため、自施設の単価に読み替えてください。
| 加算 | 計算 | 年間 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ | 6単位×10円×50人×365日 | 約110万円 |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ | 13単位×10円×50人×365日 | 約237万円 |
| 協力医療機関連携加算 | 50単位×10円×50人×12月 | 30万円 |
| 合計 | 約377万円 |
入所定員別の比較
| 入所定員 | 看護体制加算の区分 | 看護体制加算の年間 | 協力医療機関連携加算の年間 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 30人 | (Ⅰ)イ+(Ⅱ)イ=19単位/日 | 約208万円 | 18万円 | 約226万円 |
| 50人 | (Ⅰ)イ+(Ⅱ)イ=19単位/日 | 約347万円 | 30万円 | 約377万円 |
| 80人 | (Ⅰ)ロ+(Ⅱ)ロ=12単位/日 | 約350万円 | 48万円 | 約398万円 |
| 100人 | (Ⅰ)ロ+(Ⅱ)ロ=12単位/日 | 約438万円 | 60万円 | 約498万円 |
定員51人を境に1日あたりの単位数が下がるため、定員50人と80人で看護体制加算の年間額がほぼ並ぶ点に注意してください。定員が増えても比例して増えるわけではありません。
いずれも全床が稼働している前提の上限値です。入所者が入院した場合と居宅での外泊を認めた場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日246単位を算定する扱いになるため、実績の延べ在所日数で補正してください。
配置医師緊急時対応加算は回数で見積もる
この加算は日数でも月数でもなく、診療を行った回数で算定します。
| 診療の時間帯 | 単位数 | 1回あたり |
|---|---|---|
| 通常の勤務時間外(早朝・夜間・深夜を除く) | 325単位 | 3,250円 |
| 早朝(午前6時〜午前8時)・夜間(午後6時〜午後10時) | 650単位 | 6,500円 |
| 深夜(午後10時〜午前6時) | 1,300単位 | 13,000円 |
見積もりは、過去1年の記録から配置医師が訪問して診療した件数を時間帯別に数えて計算します。深夜の訪問診療が年12回なら1,300単位×10円×12回で15万6,000円、夜間が年24回なら650単位×10円×24回で15万6,000円です。実績のない施設では、見込み件数を置かずに加算を試算に入れないほうが安全です。
費用側の置き方
加算の見込み額と並べるのは、体制を整えるための費用です。ここで外部の相場を持ち込むと判断を誤ります。
看護体制加算(Ⅱ)で必要になるのは、人員基準の看護職員数に1を加えた配置です。定員50人であれば人員基準は常勤換算2以上ですが、加算を算定するには3以上が必要になります。この1名分の人件費が、自施設の給与水準で費用側に立ちます。24時間連絡体制を訪問看護ステーションとの連携で確保する場合は、その委託費も加わります。委託費は契約ごとに決まるため、複数の事業所から見積もりを取って比較してください。
到達までの順番
- 現状の看護職員の常勤換算数と、人員基準で必要な数を確認する
- 看護体制加算(Ⅱ)に必要な数との差を出す(定員50人なら3以上)
- 24時間連絡体制を自施設で確保するか、外部との連携で確保するかを決める
- 看護体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)を届け出る
- 配置医師との取決めを文書化し、配置医師緊急時対応加算を届け出る
- 協力医療機関が3要件を満たしているかを確認し、会議の記録様式を整える
看護職員の配置が動かないと、その先の加算にはたどり着けません。順番を飛ばさないことが実務上の要点です。
まとめ
特養の医療連携で算定できるのは、看護体制加算、協力医療機関連携加算、配置医師緊急時対応加算の3つです。入所定員50人なら看護体制加算の併算定で年間約347万円、協力医療機関連携加算を加えて約377万円が上限値の目安になります。定員51人以上では1日あたりの単位数が下がるため、定員だけで金額を推測せず、区分を確認してから計算してください。費用側は相場ではなく、看護職員1名分の自施設の人件費と、実際に取得した委託費の見積もりで置きます。
出典
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス カ・ト・注10・注20 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0255&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第96号)第44号の2・第51号・第54号の2 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4585
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条・第28条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4383&dataType=1&pageNo=1
