看護職員の確保が難しくなるなかで、特別養護老人ホーム(特養)が訪問看護ステーションと連携する例が増えています。ただし特養は在宅とは制度の作りが違い、「訪問看護を入れる」という言葉が指す中身も異なります。この記事では、何が連携で満たせて、何が満たせないのかを条文で整理します。

連携で満たせるのは連絡体制の要件

特養が訪問看護ステーションと連携する主な目的は、看護体制加算(Ⅱ)の24時間連絡体制を確保することです。

厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第51号ハは、看護体制加算(Ⅱ)イの施設基準として次を挙げています。

  1. 入所定員が30人以上50人以下であること((Ⅱ)ロは51人以上)
  2. 看護職員の数が、常勤換算方法で入所者の数が25またはその端数を増すごとに1以上であり、かつ人員基準で置くべき看護職員の数に1を加えた数以上であること
  3. 当該施設の看護職員により、または病院もしくは診療所もしくは指定訪問看護ステーションの看護職員との連携により、24時間連絡できる体制を確保していること
  4. 人員基準欠如の減算に該当していないこと

外部との連携が認められているのは3番目の連絡体制だけです。2番目の配置要件は自施設の看護職員で満たす必要があります。

具体的に見ます。人員基準(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第2条第1項第3号ロ)では、入所者が30人を超え50人以下の施設の看護職員は常勤換算2以上です。看護体制加算(Ⅱ)を算定するには、これに1を加えた3以上が必要になります。訪問看護ステーションと契約しても、この3という数字は動きません。

なお、特養の介護福祉施設サービスに「医療連携体制加算」という名称のものはありません。

医療保険では算定できない

もうひとつ押さえておくべきなのが、訪問看護ステーション側の収入です。特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて(平成18年保医発第0331002号)は、特養の入所者について次を算定の対象としないとしています。

  • 在宅患者訪問看護・指導料、訪問看護基本療養費、訪問看護管理療養費、訪問看護指示料(末期の悪性腫瘍であるものを除く)
  • 在宅患者訪問診療料(末期の悪性腫瘍、および看取り介護加算の施設基準に適合する施設での看取りを除く)
  • 精神科訪問看護・指導料および精神科訪問看護基本療養費(認知症の患者に限る)

また、特養の職員が行った医療行為については診療報酬を算定できないとされています。

令和8年度の診療報酬改定で新設された訪問看護遠隔診療補助料(1日につき265点、月1回限り)についても、医師または看護師の配置が義務付けられている施設に入所している患者については算定しないとされています。特養は看護職員の配置が義務付けられているため、原則として対象外です。

つまり、訪問看護ステーションが特養へ関わっても、末期の悪性腫瘍などの例外を除いて保険請求はできません。費用は施設と事業所の間の業務委託契約で支払う形になります。委託費は地域と契約条件で大きく変わるため、相場を前提に予算を組まず、複数の事業所から見積もりを取ってください。

連携の3つの形

実務上の形は3つに整理できます。

形内容主な目的
24時間連絡体制の確保夜間の電話相談の一次対応を委託する看護体制加算(Ⅱ)の要件
医療的ケアの随時依頼褥瘡処置や吸引などを個別に依頼する自施設の看護職員の負荷分散
看取り期の集中対応看取り期に訪問回数を増やす看取り介護加算に関わる体制

このうち加算の要件に直結するのは1番目です。2番目と3番目は、施設の運営判断として行うものであり、加算の算定根拠になるわけではありません。

契約書に入れる項目

  • 業務の範囲(何をどこまで依頼するか)
  • 対応時間(24時間か、特定の時間帯か)
  • 連絡の判断基準(数値で定める)
  • 出動の要否を誰が決めるか
  • 夜間に出動しなかった場合の責任分担
  • 費用(月額か、出動ごとか、両者の併用か)
  • 報告と記録の様式、保管の分担
  • 個人情報の取扱いと守秘義務
  • 契約期間、更新、解除の条件

責任分担が曖昧なまま運用を始めると、夜間に出動しなかった事例が起きたときに合意の根拠がなくなります。出動の判断は誰が行い、判断した根拠をどちらの記録に残すのかまで決めておいてください。

連絡基準は数値で決める

「何かあったら連絡してください」では現場が判断できません。次のように数値と状態で線を引きます。

  • 体温38.5度以上、または平熱から1.5度以上の上昇
  • 経皮的動脈血酸素飽和度90パーセント未満
  • 収縮期血圧の著明な低下、または普段との差が大きい場合
  • 意識レベルの変容、呼びかけへの反応低下
  • 転倒後の頭部打撲、抗凝固薬を使用している入所者の外傷
  • 嘔吐の反復、経口摂取が続かない

数値基準を決めておくと、連絡した理由と連絡しなかった理由の両方が記録として残ります。これは配置医師緊急時対応加算の「診療を求めた判断根拠」の記録にもそのまま使えます。

記録を分断しない

特養の記録と訪問看護ステーションの記録が別々だと、夜間に何が起きたのかが追えなくなります。共有シートを1枚決め、次の項目をどちらが書いても同じ形になるようにします。

  • 連絡時刻と連絡者
  • 伝えた内容(バイタル、症状、経過)
  • 受けた指示
  • 実施した対応と実施時刻
  • 配置医師へ連絡したかどうか、その時刻
  • 翌朝の申し送り事項

事業所を選ぶときの確認項目

  • 24時間対応体制が実質的に機能しているか(夜間の対応人数と交代の仕組み)
  • 特養での対応経験があるか
  • 対応できる医療的ケアの範囲
  • 記録を施設側と共有できるか
  • 現場の看護職員との相性(契約前に顔合わせの機会を持つ)
  • 責任分担の条項に合意できるか
  • 解除条項が一方的でないか

まとめ

特養と訪問看護ステーションの連携は、看護体制加算(Ⅱ)の24時間連絡体制を確保する手段として制度上認められています。一方で、看護職員を人員基準に1名を加えた数以上、自施設に配置する要件は連携では代替できません。さらに特養の入所者に対しては、末期の悪性腫瘍などの例外を除いて医療保険の訪問看護が算定の対象外であるため、費用は業務委託契約で支払う形になります。この2点を押さえたうえで、連絡基準の数値化と記録の共有を契約に書き込むことが、実務を回す鍵になります。

出典