喀痰吸引、経管栄養、インスリン注射、在宅酸素。特別養護老人ホーム(特養)で必要になる医療的ケアは施設ごとに幅があり、入退所のたびに構成が変わります。医療ニーズを定期的に評価する仕組みがないと、看護職員の配置も、加算の算定根拠も、受入の可否判断も、すべて経験則で決まってしまいます。

なぜ医療ニーズを評価するのか

理由は3つあります。

  1. 加算の算定根拠になる(看護体制加算、配置医師緊急時対応加算、褥瘡マネジメント加算などの記録の土台)
  2. 看護職員の配置数を判断する材料になる
  3. 入所判定で受入可否を判断する材料になる

評価をせずに運営していると、算定できるはずの加算の記録が残っていない、夜間に対応できない状態で受け入れてしまう、といった問題が同時に起こります。

評価の3軸

医療ニーズは次の3軸で見ると、そのまま配置と加算の話につながります。

医療処置の内容

  • 喀痰吸引(回数と時間帯)
  • 経管栄養(胃瘻、経鼻)
  • インスリン注射
  • 在宅酸素
  • 褥瘡処置
  • 尿道カテーテル管理

観察の頻度

  • バイタル測定の必要性
  • 急変のリスク
  • 疼痛の管理

医療連携の必要性

  • 配置医師の診察頻度
  • 協力医療機関への相談頻度
  • 専門外来の受診

区分の作り方

3軸の合計から、入所者を4区分に分けます。区分名はアルファベットではなく、意味の分かる言葉にしておくと引き継ぎで誤解が起きません。

区分状態の目安評価の頻度
高1日に複数回の医療的ケアがあり、夜間の対応も発生する月1回
中1日1〜2回の医療的ケア、バイタル管理が必要月1回
低週数回の医療的ケア、定期的な観察3か月に1回
軽微月数回の診察と服薬管理が中心6か月に1回

状態が変わったときは頻度に関わらず随時再評価します。評価シートは加算の記録と同じファイルにまとめ、算定根拠として保管します。

評価結果を看護職員配置につなげる

特養の看護職員の数は、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第2条第1項第3号ロで次のように定められています。

入所者の数看護職員(常勤換算)
30以下1以上
30を超え50以下2以上
50を超え130以下3以上
130超3に、130を超えて50またはその端数を増すごとに1を加えた数以上

看護職員のうち1人以上は常勤でなければなりません。

ここに看護体制加算(Ⅱ)の要件が重なります。同加算の施設基準は、看護職員の数が常勤換算で入所者25またはその端数を増すごとに1以上であり、かつ人員基準で置くべき看護職員の数に1を加えた数以上であることを求めています。入所定員50人なら人員基準は2以上ですが、加算を算定するには3以上が必要になります。

医療ニーズの高い区分が増えているのに配置が人員基準ぎりぎりのままだと、夜間対応が成り立たないうえ、看護体制加算(Ⅱ)とそれを前提とする配置医師緊急時対応加算の両方を取り逃がします。評価結果と配置数を同じ表で並べておくと、この判断が数字で下せます。

評価結果と加算の対応

評価で見ている内容対応する加算
24時間の看護連絡体制、看護職員配置看護体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)
時間外の急変対応と診療の記録配置医師緊急時対応加算
褥瘡リスクの評価とケア計画褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)(Ⅱ)
排せつの状態評価と支援計画排せつ支援加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)
心身の状況等の情報提出と活用科学的介護推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)
継続的な栄養管理の強化栄養マネジメント強化加算

外部の医療資源で補えない範囲を知っておく

医療ニーズが上がると「訪問看護を入れればよい」と考えがちですが、特養では医療保険側の取扱いが在宅とは異なります。特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて(平成18年保医発第0331002号)では、特養の入所者について、末期の悪性腫瘍である場合を除き訪問看護基本療養費や訪問看護指示料を算定の対象としないこと、末期の悪性腫瘍と看取りの場合を除き在宅患者訪問診療料を算定の対象としないことが示されています。施設の職員が行った医療行為についても診療報酬は算定できません。

つまり、医療ニーズの増加に対応する手段は、原則として自施設の看護職員配置と、配置医師・協力医療機関との連携です。訪問看護ステーションとの連携は、看護体制加算(Ⅱ)の24時間連絡体制を確保する手段としては有効ですが、日々の医療的ケアを外部に振り替える仕組みではありません。

入所判定での使い方

入所判定会議では、申込者の医療ニーズ区分に加えて、既存入所者の区分別の人数と看護職員の配置状況を並べます。高区分の比率が上がると夜間の負荷が跳ね上がるため、受入後に対応できずに退所となる事態を避けられます。受入の可否だけでなく、受け入れるために何を増やすかを同じ場で決めておくと、判断が属人的になりません。

配置医師との情報共有も、この表を使うと短時間で済みます。回診時に区分別の一覧を示し、優先して診る入所者を決める形にすれば、診察の順番づけが記録として残ります。

まとめ

医療ニーズ評価は、加算の記録、看護職員の配置判断、入所判定の3つに同時に効く仕組みです。評価の区分は意味の分かる名前にし、頻度を区分ごとに決め、人員基準と看護体制加算(Ⅱ)の要件を同じ表で見えるようにしてください。特養では医療保険の訪問看護や訪問診療で補える範囲が限られているため、評価の結果は最終的に自施設の看護職員配置と配置医師・協力医療機関との連携の設計に返ってきます。

出典