在宅復帰支援機能加算とは何か

特別養護老人ホーム(特養)の在宅復帰支援機能加算は、入所者が在宅へ戻り、そこでの生活が続くよう支える機能を評価する加算です。指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の介護福祉施設サービス「タ」に、1日につき10単位と定められています。

はじめに名称を整理しておきます。「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」は介護老人保健施設の項目で、特養にはありません。特養にあるのは在宅復帰支援機能加算であり、区分もⅠとⅡには分かれていません。特養の資料でⅠ・Ⅱの区分を見かけたら、老健の資料が混ざっている可能性があります。

要件は2層になっている

要件は2か所に分かれています。告示第21号の注に書かれた施設が行うべきことと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第70号に書かれた実績の数値です。

告示第21号の注が求めること

  • 入所者の家族との連絡調整を行っていること
  • 入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、入所者に係る居宅サービスに必要な情報の提供、退所後の居宅サービスの利用に関する調整を行っていること

告示第95号 第70号が求めること

  • 算定日が属する月の前6月間に当該施設から退所した者の総数のうち、当該期間内に退所して在宅において介護を受けることとなった者の占める割合が100分の20を超えていること
  • 退所者の退所後30日以内に、施設の従業者が退所者の居宅を訪問すること、または指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、退所者の在宅における生活が1月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること

分子に数えられる退所者には条件があります。当該施設における入所期間が1月間を超えていた退所者に限られます。また、在宅・入所相互利用加算を算定している者は、退所者の総数から除きます。

在宅復帰の割合はどう計算するか

計算は次の形になります。

項目内容
対象期間算定日が属する月の前6月間
分母期間内に退所した者の総数(在宅・入所相互利用加算の算定者を除く)
分子期間内に退所し、在宅において介護を受けることとなった者(入所期間が1月間を超えていた退所者に限る)
基準分子÷分母が100分の20を超えること

前6月間の退所者が20人であれば、在宅へ戻った人が5人いれば25パーセントで基準を超えます。4人だと20パーセントちょうどで、「20を超える」という文言を満たしません。ぎりぎりの水準で運用する場合は、この境界の扱いに注意してください。

告示の文言で除外が明示されているのは在宅・入所相互利用加算の算定者だけです。分母をどう数えるかは月ごとに揺れやすいため、退所者名簿の様式に「入所期間」「退所先」「在宅・入所相互利用加算の算定有無」の3列を持たせ、毎月そのまま集計できるようにしておくのが確実です。

退所後30日以内の確認をどう回すか

もうひとつの要件は、退所後の確認です。方法は2つあり、どちらでも構いません。

  1. 施設の従業者が退所者の居宅を訪問する
  2. 指定居宅介護支援事業者から情報提供を受ける

確認する内容は「在宅における生活が1月以上継続する見込みであること」で、確認したことを記録に残す必要があります。訪問が難しい場合でも、居宅介護支援事業者との情報連携で要件を満たせる設計になっています。退所時に担当の介護支援専門員へ連絡し、退所後30日以内に状況を返してもらう流れを、退所手続の標準手順に組み込んでおくと漏れません。

収支への影響

1単位10円(その他地域)として計算します。

入所定員計算年間
50人10単位×10円×50人×365日約183万円
80人10単位×10円×80人×365日約292万円

1日10単位は小さく見えますが、全入所者に掛かる日単位の加算なので、年間では看護体制加算に匹敵する規模になります。実際には入院や外泊の期間が差し引かれます。入院と居宅への外泊は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日246単位を算定する扱いになるためです。

月次で確認する項目

  • 前6月間の退所者数と、うち在宅復帰した人数を集計しているか
  • 分子に数えた退所者の入所期間が1月間を超えているか確認しているか
  • 在宅・入所相互利用加算の算定者を分母から除いているか
  • 退所後30日以内の確認を全退所者について実施し、記録しているか
  • 家族との連絡調整の記録が個別に残っているか
  • 居宅介護支援事業者への情報提供と利用調整の記録が残っているか

要件を満たさなくなった月は速やかに算定を止めます。実績値は月ごとに動くため、要件充足の判定を月次のルーティンに組み込んでおかないと、後の実地指導で過誤請求を指摘され返還を求められるおそれがあります。

運営方針との関係

在宅復帰の割合を意識すると、入所判定の場で「在宅へ戻る見込みがあるか」という視点が入ります。一方で特養は生活の場でもあり、看取りまで支える役割を担っています。在宅・入所相互利用加算(1日につき40単位)のように、在宅と入所を行き来する形を支える加算も別に置かれています。

在宅復帰支援機能加算を取りにいくかどうかは、収支だけでなく、施設としてどの役割を引き受けるかという方針の問題でもあります。数字だけで追いかけると、入退所の判断が現場の納得を得られなくなります。

まとめ

特養の在宅復帰支援機能加算は1日につき10単位で、区分はありません。要件は、家族との連絡調整と居宅介護支援事業者への情報提供という施設の行為と、前6月間の退所者に占める在宅復帰者の割合が20パーセントを超えること、退所後30日以内に在宅生活の継続見込みを確認し記録することの3点です。退所者名簿に入所期間と退所先の列を足し、退所手続に30日後の確認を組み込むだけで、要件の大半は日常業務の中で満たせます。

出典