自施設でどの加算が算定でき、いくらの増収になるのか。この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)に置かれている加算を使って、計算の手順を組み立てます。
計算式は3種類に分かれる
介護報酬の加算は、単位の付き方が3種類あります。式を混ぜると桁を間違えます。
| 型 | 式 | 例 |
|---|---|---|
| 1日につき | 単位数×単価×対象人数×算定日数 | 看護体制加算、在宅復帰支援機能加算、栄養マネジメント強化加算 |
| 1月につき | 単位数×単価×対象人数×月数 | 協力医療機関連携加算、褥瘡マネジメント加算、科学的介護推進体制加算 |
| 1回につき | 単位数×単価×発生回数 | 配置医師緊急時対応加算 |
単価は、その他地域で1単位10円です。地域区分と人件費割合に応じて上乗せがあるため、試算は10円で置いたうえで、自施設の単価に読み替えてください。
対象人数も型によって違います。看護体制加算は届出をした施設の入所者全員に掛かりますが、褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算は、要件を満たした入所者ごとの算定です。全床に一律に掛けた試算は必ず過大になります。
稼働の実態を式に入れる
算定日数は365日ではありません。入所者が病院または診療所へ入院した場合、および居宅における外泊を認めた場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日につき246単位を算定します。入院と外泊の初日と最終日は算定できません。
実務上は、次のように補正します。
- 過去12か月の延べ在所日数を実績から取る
- 延べ在所日数を「入所定員×365日」で割って稼働率を出す
- 日単位の加算には、入所定員×365日ではなく延べ在所日数を掛ける
稼働率95パーセントの施設なら、上限値の試算から5パーセントを引いた額が現実的な見込みになります。
入所定員50人の施設で試算する
看護体制加算は入所定員で区分が変わります。入所定員30人以上50人以下は「イ」、51人以上は「ロ」です。定員50人ならイの区分になります。
| 加算 | 計算 | 年間 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ 6単位/日 | 6×10円×50人×365日 | 約110万円 |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ 13単位/日 | 13×10円×50人×365日 | 約237万円 |
| 協力医療機関連携加算 50単位/月 | 50×10円×50人×12月 | 30万円 |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) 10単位/月 | 10×10円×50人×12月 | 6万円 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 50単位/月 | 50×10円×50人×12月 | 30万円 |
| 合計 | 約413万円 |
看護体制加算の(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できます。老企第40号に、(Ⅰ)イと(Ⅱ)イ、または(Ⅰ)ロと(Ⅱ)ロをそれぞれ同時に算定することが可能であると明記されています。
入所定員80人の施設で試算する
定員51人以上は「ロ」の区分になり、1日あたりの単位数は下がりますが、対象人数が増えます。
| 加算 | 計算 | 年間 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)ロ 4単位/日 | 4×10円×80人×365日 | 約117万円 |
| 看護体制加算(Ⅱ)ロ 8単位/日 | 8×10円×80人×365日 | 約234万円 |
| 協力医療機関連携加算 50単位/月 | 50×10円×80人×12月 | 48万円 |
| 在宅復帰支援機能加算 10単位/日 | 10×10円×80人×365日 | 約292万円 |
| 合計 | 約691万円 |
回数で算定する加算をどう見積もるか
配置医師緊急時対応加算は、配置医師が施設の求めに応じて訪問し診療を行った回数で算定します。単位数は通常の勤務時間外が1回につき325単位、早朝または夜間が650単位、深夜が1,300単位です。
見積もりは、過去1年の夜間対応記録から「配置医師が訪問して診療した件数」を時間帯ごとに数えるところから始めます。たとえば深夜の訪問診療が年12回あれば、1,300単位×10円×12回で15万6,000円です。予測ではなく実績件数から出すことが前提になります。
体制の整備にかかる費用の置き方
加算の取得には、看護職員の増員や医療機関との連携など体制の費用がかかります。ここで外部の相場を持ち込むと試算が崩れます。委託費や人件費は地域・法人・契約条件で大きく変わるため、自施設で実際に見積もりを取った金額を入れてください。
判断は「加算の年間見込み額 − 体制費用の年間見込み額」で行います。看護体制加算(Ⅱ)のように看護職員を人員基準より1名多く配置することが要件になっている加算では、その増員分の人件費が費用側に必ず立ちます。
試算に入れてはいけないもの
介護保険の特養(指定介護老人福祉施設)の試算に、他のサービス種別の加算を混ぜないでください。障害福祉サービスの単位数表にある加算、介護老人保健施設の項目、特定施設入居者生活介護の加算は、名前が似ていても特養では算定できません。試算表を作るときは、加算名を告示第21号の介護福祉施設サービスの項で1つずつ引き当てる作業を必ず挟みます。
まとめ
加算の試算は、日単位・月単位・回数単位で式を分け、1単位10円で置き、稼働率と入院外泊の246単位で補正する、という3手順で作れます。入所定員50人なら看護体制加算の併算定で年間約347万円、体制加算をまとめて整えると約413万円が上限値の目安です。費用側は相場ではなく自施設の見積もりを入れ、加算名は必ず告示で引き当ててから表に載せてください。
出典
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0255&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第96号)第51号・第54号の2 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4585
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4383&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675936.pdf
