特養では、要件を満たしているのに届出をしていない、あるいは体制を少し変えれば算定できるのに知られていない加算があります。この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)に実際に置かれている加算を、単位数と要件で並べます。単位数はすべて告示の現行の値です。
体制で決まる加算はどこを見るか
まず、届出と体制の整備で算定できるものです。
| 加算 | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ | 6単位/日 | 入所定員30〜50人、常勤の看護師1名以上 |
| 看護体制加算(Ⅰ)ロ | 4単位/日 | 入所定員51人以上、常勤の看護師1名以上 |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ | 13単位/日 | 定員30〜50人、看護職員が常勤換算25対1かつ人員基準+1名以上、24時間連絡体制 |
| 看護体制加算(Ⅱ)ロ | 8単位/日 | 定員51人以上、(Ⅱ)イと同じ看護職員配置と24時間連絡体制 |
| 協力医療機関連携加算 | 50単位/月 | 協力医療機関が人員基準第28条第1項各号の3要件を満たし、病歴等を共有する会議を定期開催 |
| 協力医療機関連携加算(上記以外) | 5単位/月 | 会議は開催しているが協力医療機関が3要件を満たさない場合 |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) | 10単位/月 | 届出による |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ) | 5単位/月 | 届出による |
| 在宅復帰支援機能加算 | 10単位/日 | 在宅復帰の割合と退所後30日以内の確認・記録 |
看護体制加算で最も多い誤解は、(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらかしか取れないという思い込みです。老企第40号は「看護体制加算(Ⅰ)イ及び看護体制加算(Ⅱ)イ又は看護体制加算(Ⅰ)ロ及び看護体制加算(Ⅱ)ロは、それぞれ同時に算定することが可能である」と明記しています。
(Ⅱ)の24時間連絡体制は、自施設の看護職員によるほか、病院・診療所・指定訪問看護ステーションの看護職員との連携によって確保することも施設基準で認められています。ただし別要件として、看護職員を常勤換算で人員基準の数に1を加えた数以上、自施設に配置することが求められます。外部との連携は連絡体制の要件を満たす手段であって、配置の要件を肩代わりするものではありません。
記録と評価で決まる加算はどこを見るか
次に、入所者ごとの評価と記録で算定するものです。対象となる入所者だけが算定対象になるため、全床に一律に掛けて考えないことが重要です。
| 加算 | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ) | 3単位/月 | 入所時の確認と3月に1回の評価、ケア計画の作成と見直し |
| 褥瘡マネジメント加算(Ⅱ) | 13単位/月 | (Ⅰ)の要件に加え、褥瘡の治癒または発生がないこと |
| 排せつ支援加算(Ⅰ) | 10単位/月 | 排せつ状態の評価と支援計画 |
| 排せつ支援加算(Ⅱ) | 15単位/月 | (Ⅰ)に加えて改善の実績 |
| 排せつ支援加算(Ⅲ) | 20単位/月 | (Ⅱ)より高い実績区分 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅰ) | 40単位/月 | 心身の状況等の情報提出と活用 |
| 科学的介護推進体制加算(Ⅱ) | 50単位/月 | (Ⅰ)に加えて提出する情報の範囲が広い |
| 栄養マネジメント強化加算 | 11単位/日 | 入所者ごとの継続的な栄養管理の強化 |
褥瘡マネジメント加算は一本化されておらず、(Ⅰ)3単位と(Ⅱ)13単位の2区分のままです。科学的介護推進体制加算も(Ⅰ)40単位・(Ⅱ)50単位で、(Ⅱ)を60単位とする記述は誤りです。
入所定員50人の施設ではいくらになるか
1単位を10円(その他地域)として計算します。地域区分によって単価は上がるため、実際には自施設の単価に置き換えてください。
| 加算 | 計算 | 年間 |
|---|---|---|
| 看護体制加算(Ⅰ)イ | 6単位×10円×50人×365日 | 約110万円 |
| 看護体制加算(Ⅱ)イ | 13単位×10円×50人×365日 | 約237万円 |
| 協力医療機関連携加算 | 50単位×10円×50人×12月 | 30万円 |
| 高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) | 10単位×10円×50人×12月 | 6万円 |
| 在宅復帰支援機能加算 | 10単位×10円×50人×365日 | 約183万円 |
| 栄養マネジメント強化加算 | 11単位×10円×50人×365日 | 約201万円 |
看護体制加算の2区分を併算定するだけで年間約347万円になります。これは全床が稼働している前提の上限値で、実際には入院・外泊の期間が差し引かれます。入所者が入院した場合と居宅で外泊した場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日246単位を算定する扱いになり、初日と最終日は算定できません。
加算より先に確認したい減算
加算を積み上げる前に、減算に該当していないかを確認してください。業務継続計画未策定減算は、施設・居住系サービスでは所定単位数の3パーセントが減算されます。高齢者虐待防止措置未実施減算は1パーセント、安全管理体制未実施減算は1日につき5単位、栄養管理の基準を満たさない場合は1日につき14単位の減算です。
これらは加算と違って基本報酬そのものに掛かるため、取りこぼしよりも先に潰すべき論点になります。
まとめ
特養の加算は、体制で決まるものと入所者ごとの記録で決まるものに分かれます。体制で決まる加算は届出をした月から効き、入所定員50人なら看護体制加算の併算定だけで年間約347万円の差が出ます。一方で記録型の加算は対象者数に依存するため、全床に掛けた試算は実態と離れます。まずは自施設の入所定員と看護職員の常勤換算数を確認し、看護体制加算(Ⅱ)の「人員基準+1名以上」を満たしているかどうかから点検するのが近道です。
出典
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0255&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第96号)第51号 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4585
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第70号・第71号の2・第71号の3 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4584
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条・第28条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4383&dataType=1&pageNo=1
