• 特養の急変時対応を評価する代表的な加算は「配置医師緊急時対応加算」で、早朝・夜間・深夜の対応が算定の対象になり得ます
  • 2024年度改定で日中(配置医師の通常の勤務時間外)の対応も評価に加わり、緊急時対応体制を整える意義が高まっています

特養の緊急時医療対応加算とはどんな制度か?

特別養護老人ホーム(特養)では、入居者の病状が急変した際に、施設の配置医師や協力医療機関の医師が緊急的な診療・処置を行う場面があります。こうした緊急時の医療対応を介護報酬上で評価する代表的な仕組みが「配置医師緊急時対応加算」です。2018年度の介護報酬改定で新設された加算で、以下のような特徴があります。

項目内容の目安
算定対象特養等の介護保険施設
算定場面配置医師等が施設の求めに応じて緊急に診療を行った場合
評価される時間帯早朝・夜間、深夜(2024年度改定で日中の勤務時間外も追加)
報酬体系介護報酬(単位×地域単価)

ポイントは、「駆けつけ対応そのもの」を評価する出来高型の加算である点です。体制を整えるだけで毎月自動的に収益が発生するものではなく、実際に緊急対応が行われた回数に応じて算定の対象になります。

単位数と算定場面はどう整理すればよいか?

対応の時間帯単位数の目安
日中(配置医師の通常の勤務時間外)325単位/回
早朝・夜間650単位/回
深夜1,300単位/回

※単位数・区分は介護報酬改定で変動するため、実際の算定にあたっては最新の報酬告示・通知で必ず確認してください。

算定の前提として、複数の配置医師を置くこと、または配置医師と協力医療機関の医師が連携して緊急時に対応できる体制を整えていることなど、体制面の要件が定められています。あわせて、いつ・誰が・どのような求めに応じて対応したのかを診療録・介護記録に残し、緊急対応の経緯を説明できる状態にしておくことが、運営指導の観点でも重要です。

収益はどう試算すればよいか?

出来高型の加算のため、試算の起点は「自施設で夜間・休日の急変対応が月に何回発生しているか」です。定員100名規模の特養を例に、地域単価10円と仮定した目安値を示します。

想定される対応実績月次試算年間試算
早朝・夜間の対応が月3回650単位×3回×10円=19,500円約23.4万円
早朝・夜間3回+深夜1回(650×3+1,300)×10円=32,500円約39万円
上記+日中の勤務時間外2回(650×3+1,300+325×2)×10円=39,000円約46.8万円

※対応回数は入居者の状態像・看取り期の入居者数などで大きく変動します。過去1年の急変対応記録から自施設の実績値を拾って試算してください。

金額の規模だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、この加算の本質は「急変時に配置医師・協力医療機関へ確実につながる体制が実働していること」の証明にあります。看取り介護加算の上位区分では緊急時対応体制の整備が要件に関わるとされており、看取り対応を強化したい特養にとっては、収益以上の意味を持つ体制整備だといえます。

コストとのバランスはどう考えるか?

緊急時対応体制を整えるには、加算収入と同時に以下のようなコストが発生します。試算の際は必ず差し引いて検討してください。

  • 配置医師との契約見直し・緊急時対応に係る手当
  • 夜間オンコールを担う看護職員の手当や外部委託費
  • 協力医療機関との連携会議・情報共有ツールの運用工数

まとめ

  • 特養の緊急時医療対応を評価する代表的な加算は配置医師緊急時対応加算で、早朝・夜間・深夜の対応が算定の対象になり得ます
  • 2024年度改定で日中(配置医師の通常の勤務時間外)の区分が新設され、評価の範囲が広がりました
  • 出来高型の加算のため、自施設の急変対応実績をもとに回数×単位数×地域単価で試算するのが基本です
  • 配置医師・オンコール体制のコストまで含めて収支を確認し、看取り体制の強化とあわせて検討することが重要です

出典

この記事で扱う制度・報酬の一次資料です。数値や要件は公開時点のものなので、最新の内容は原典でご確認ください。

  • 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号)新旧対照表」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227894.pdf