看取り介護加算とはどのような加算か
特養(指定介護老人福祉施設)における看取り介護加算は、入所者が人生の最終段階を迎えた際に、医師の医学的判断に基づき、本人及び家族の意向を踏まえた看取り介護を行った場合に算定できる加算です。看取りを行ったという事実だけでは算定できず、体制面の要件と個別の記録要件の両方を満たす必要があります。
施設長や看護職員にとって悩ましいのは、医師の診断記録と多職種会議の記録をどの時点で、どのような内容で残せば実地指導に耐えられるかという点です。本稿では告示及び通知で確認できる範囲で、算定要件と記録実務を整理します。
算定要件には何があるか
看取り介護加算の算定要件は、大きく体制要件と個別要件に分かれます。
体制要件
- 看取り指針を整備し、入所者又はその家族に対して入所に際し指針の内容を説明し、同意を得ていること
- 医師、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して看取り指針を定めていること
- 看護職員を中心に、医師、介護職員、生活相談員等による協議の上、随時、指針の見直しを行っていること
- 入所者が重篤な状態となった場合に、医師等がその家族に対し病状や予後について適切な情報を提供し、本人及び家族が医療・ケアの方針を選択できる体制を整えていること
- 看取りに関する職員研修を実施していること
- 個室又は静養室を確保し、プライバシーに配慮した環境を整えていること
個別要件
- 医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断していること
- 当該診断を前提に、医師、看護職員、介護職員、生活相談員等が共同で作成した計画に基づき、本人又は家族の同意を得て看取り介護を行っていること
- 看取り介護の実施にあたり、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定が、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインの考え方に沿って行われていること
これらは告示及び解釈通知に基づくものであり、実地指導では記録の有無と日付の整合性が重点的に確認されます。
医師の診断記録には何を記載すべきか
看取り介護加算の起点になるのは、配置医師又は協力医療機関の医師による回復見込みがないという診断です。この診断記録が曖昧だと、加算算定期間の起算日が確定できず、返戻や過誤調整の対象になりやすくなります。
診断記録に盛り込むべき項目の例は次の通りです。
- 診断日(起算日として扱われる日付)
- 診断の根拠となった医学的所見(病名、検査所見、経過)
- 回復の見込みがないと判断した医学的理由
- 今後予測される経過の見通し
- 医師の氏名及び署名又は記名押印
診断は一度で終わりではなく、状態の変化に応じて再評価し、カルテ及び看取り介護の記録に反映させることが望まれます。診断記録と看護記録、介護記録の内容に矛盾がないかは、実地指導でも確認されるポイントです。
多職種会議はいつ・誰が参加し何を記録するか
多職種会議(カンファレンス)は、看取り指針を個別の入所者に当てはめ、本人及び家族の意向を確認しながら方針を具体化する場です。開催のタイミングは次の場面が目安になります。
- 医師が回復見込みがないと診断した直後
- 本人の状態に大きな変化が生じたとき
- 本人又は家族の意向に変化があったとき
- 看取り介護計画を見直す必要が生じたとき
参加者の目安は次の通りです。
- 配置医師又は協力医療機関の医師
- 看護職員
- 介護職員(担当職員)
- 生活相談員
- 必要に応じて管理栄養士、機能訓練指導員
会議記録に残すべき項目のチェックリストは以下の通りです。
- 開催日時、場所
- 出席者の氏名及び職種
- 本人の状態(医師の診断内容を含む)の共有内容
- 本人及び家族への説明内容と、本人又は家族の意向
- 決定した医療・ケアの方針
- 次回会議の予定又は見直しの時期
- 記録者の署名又は記名
これらの記録は看取り介護計画書及び経過記録とセットで保管し、死亡日からさかのぼって算定期間と突合できる状態にしておくことが実務上のポイントです。
看取り介護加算の単位数はどう決まるか
看取り介護加算は、死亡日からさかのぼった日数に応じて単位数が段階的に高くなる仕組みです。令和6年度介護報酬改定後の特養における看取り介護加算(I)の単位数は次の通りです。
| 期間区分 | 単位数 |
|---|---|
| 死亡日以前31日〜45日 | 72単位/日 |
| 死亡日以前4日〜30日 | 144単位/日 |
| 死亡日の前日及び前々日 | 680単位/日 |
| 死亡日 | 1280単位/日 |
看護体制加算(II)を算定している施設では、これに加えて看取り介護加算(II)が別建てで設定されており、死亡日に近づくほど単位数が高くなる同様の構造になっています。自施設がどちらの区分で算定しているかは、看護体制加算の算定状況と合わせて確認する必要があります。
単位数は改定の都度見直されるため、最新の単位数は改定年度の告示で必ず確認してください。
実地指導で指摘されやすいのはどこか
看取り介護加算に関する実地指導では、次のような点が確認されることが多くなっています。
- 看取り指針の内容が、実際の看取り介護計画や会議記録と整合しているか
- 医師の診断日と、加算算定の起算日が一致しているか
- 本人又は家族への説明と同意の記録が残っているか
- 多職種会議が状態変化のたびに開催され、記録が残っているか
- 死亡日が確定した後、算定期間をさかのぼって日数区分ごとの単位数が正しく計算されているか
- 看取りに関する職員研修の実施記録があるか
これらは個別記録の整備状況で判断されるため、会議や診断のタイミングでその都度記録を残しておくことが、後からまとめて作成するよりも確実な備えになります。
まとめ
看取り介護加算の算定は、医師の診断記録、多職種会議の記録、本人及び家族への説明と同意の記録という三つの記録を、時系列で矛盾なく整えることが土台になります。体制要件を満たすだけでなく、入所者ごとに記録が揃っているかを定期的に点検する仕組みを施設内に持つことが、安定した算定と実地指導への備えにつながります。
出典
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197665.html
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第46号)e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/
- 厚生労働省 介護保険制度における施設サービスに関する情報 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html