配置医師緊急時対応加算とは何か

特別養護老人ホーム(特養)の入所者が夜間に急変し、施設の求めに応じて配置医師が訪問して診療を行った場合に算定できるのが、配置医師緊急時対応加算です。指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)の介護福祉施設サービス「カ」に定められています。

単位数は、診療が行われた時間帯によって3つに分かれます。

診療が行われた時間帯単位数
配置医師の通常の勤務時間外(早朝・夜間・深夜を除く)1回につき325単位
早朝(午前6時から午前8時)または夜間(午後6時から午後10時)1回につき650単位
深夜(午後10時から午前6時)1回につき1,300単位

告示は早朝・夜間・深夜の範囲をこのように明示しています。同じ急変対応でも、診療が午後9時50分に始まったか午後10時10分に始まったかで単位数は2倍変わります。診療の開始時刻を分単位で残すことが、そのまま算定額の根拠になります。

算定の前提になる条件は2つです。ひとつは、施設の求めに応じて配置医師が施設を訪問し、入所者に対して診療を行ったこと。もうひとつは、診療を行った理由を記録したことです。加えて告示の注には、看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は算定しない、というただし書きがあります。夜間の医療対応は、24時間の看護連絡体制とセットで評価される仕組みになっています。

なお「緊急時施設療養費」という名称のものを特養の資料で見かけることがありますが、これは介護老人保健施設と介護医療院に置かれた項目です。特養の介護福祉施設サービスに、その名称のものはありません。

施設基準は何を求めているか

配置医師緊急時対応加算には届出が必要で、その施設基準は厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)第54号の2に置かれています。内容は次の2点です。

  • 入所者に関する注意事項や病状等についての情報共有、曜日や時間帯ごとの医師との連絡方法、診療を依頼する場合の具体的な状況などについて、配置医師と施設との間であらかじめ具体的な取決めをしていること
  • 複数名の配置医師を置いていること、または配置医師と協力医療機関の医師が連携して、施設の求めに応じ24時間対応できる体制を確保していること

つまりこの加算は、夜に医師が来たという事実だけでなく、来られる体制を平時に設計してあることを評価しています。配置医師が1人しかいない施設では、協力医療機関の医師と連携して24時間対応できる形を作ることが要件になります。取決めは口頭ではなく、連絡方法と依頼の判断基準まで含めた文書として残しておくのが実務上の基本です。

夜間対応記録に何を書けばよいか

記録は算定根拠であると同時に、実地指導で最初に確認される書類です。次の9項目を時系列で残します。

  1. 発生日時と発見した職種
  2. 発見時の状態(バイタルサイン、意識レベル、症状)
  3. 配置医師へ連絡した時刻と連絡手段
  4. 施設から診療を求めた事実と、その判断根拠
  5. 配置医師からの指示内容
  6. 診療の開始時刻(訪問して診療を始めた時刻)
  7. 実施された診療の内容(投薬、検査、処置の具体名)
  8. 診療を行った理由(告示が求める必須項目)
  9. 経過観察の内容と家族への連絡状況

記載の形は次のように整えておくと、時間帯区分の判断まで一枚で追えます。

項目記載例
発生時刻23時15分
発見者夜勤看護職員
状態体温38.9度、経皮的動脈血酸素飽和度91パーセント、呼吸苦あり
医師連絡時刻23時20分(電話)
診療の求め23時20分、施設から往診を依頼
診療開始時刻23時45分(深夜の区分)
診療内容診察、酸素投与開始、輸液、抗菌薬投与
診療を行った理由発熱と酸素化低下があり、施設内での経過観察のみでは対応困難と判断したため
経過観察1時・3時・5時にバイタル再測定
家族連絡23時50分、家族へ状況説明

「診療を行った理由」の欄を様式に組み込んでおくことが、この加算では特に重要です。告示が明文で求めている記録であり、ここが空欄だと診療の事実があっても算定根拠として弱くなります。

算定できない場合はどこか

次のような場合は要件を満たしません。

  • 定期的な回診の延長として診療した場合(施設の求めに応じた緊急の訪問ではない)
  • 配置医師以外の医師が診療した場合(この加算の対象は配置医師の訪問診療です)
  • 看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合
  • 診療を行った理由が記録されていない場合
  • 電話で指示を受けただけで、配置医師が訪問していない場合

特に4点目と5点目は現場で起こりやすい取りこぼしです。夜間に電話で相談し、看護職員が指示どおりに対応して朝を迎えたという運用は安全面では妥当ですが、この加算の対象にはなりません。

令和8年度の改定で何が変わったか

令和8年度の介護報酬改定は令和8年6月に施行されました。改定率はプラス2.03パーセントで、中身は介護職員等処遇改善加算の拡充と、食費の基準費用額を1,445円から1,545円へ引き上げる2点です。加算の新設や廃止、要件の厳格化はありません。配置医師緊急時対応加算の単位数と要件は、これまでと同じです。

夜間対応に関係する変更としては、協力医療機関連携加算の定期的な会議の開催頻度が見直され、情報通信技術を用いた情報共有を行う場合は年1回、行わない場合は原則年3回となりました。配置医師が1人の施設が協力医療機関と24時間体制を組む際、この会議の頻度は運用設計に直結します。

まとめ

配置医師緊急時対応加算は、通常の勤務時間外325単位、早朝・夜間650単位、深夜1,300単位を1回につき算定する加算です。算定できるかどうかは、平時の取決めと24時間対応体制という施設基準、そして診療開始時刻と診療を行った理由の記録で決まります。夜間対応の様式に「診療の求め」「診療開始時刻」「診療を行った理由」の3欄を追加するだけでも、算定漏れと指摘リスクの両方を大きく減らせます。

出典