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特養の人件費構造を解体する:利益率を3ポイント改善する7つのレバー
特養2026-04-07

特養の人件費構造を解体する:利益率を3ポイント改善する7つのレバー

特養の経営を圧迫している最大要因は人件費である。WAM調査によれば特養の平均人件費比率は65.2%、上位25%でも60%台前半にとどまる。逆に言えば、ここを2〜3ポイント改善するだけで経常利益率は同等分改善する。本稿では、人件費構造を七つの要素に分解し、それぞれのレバーを数字で示す。

人件費の内訳を見える化する

多くの特養で「人件費は大きすぎる」と言いつつ、実際に内訳を分解している施設は少ない。まず次の七分類で再集計することから始める。

  1. 正職員給与(基本給+諸手当)
  2. 非常勤給与
  3. 派遣費用(人材派遣会社経由)
  4. 紹介会社費用(看護師・介護福祉士)
  5. 処遇改善加算原資
  6. 法定福利費
  7. 退職給付引当金

重要なのは「3・4が人件費に含まれていないケースがある」ことだ。派遣費用を「業務委託費」に計上している施設は、人件費比率が実態より低く見えている。ここを正しく計上すると、60%前半に見えていた施設が実は68%だった、というケースは珍しくない。

レバー1:派遣依存度の削減

派遣看護師の時給は4,000〜5,500円。正職員の1.5〜1.8倍である。派遣を1名→0名にできれば年間600〜900万円の差が出る。打ち手は前記事の「紹介会社費用ゼロ化」と同じだが、派遣の場合は契約更新のタイミングで「3ヶ月後に契約終了予定、その間に正職員を採用する」という期限付き運用にするのが肝要だ。

レバー2:シフトの機会損失を潰す

「早番・日勤・遅番」の重複時間帯を点検する。ユニット型特養では、朝食対応のために早番が7時前に出勤するが、実は6時45分〜7時15分の30分間に4人の職員が重なっているケースがある。シフトを15分ずらすだけで、月間60時間の人件費を削れる。年額で約20万円/ユニット、10ユニットなら200万円。

レバー3:処遇改善加算の「配分設計」

処遇改善加算は「取る」だけで終わっていないか。配分設計で定着率が変わる。ありがちな失敗は「全員に均等配分」。これでは頑張った職員も、普通の職員も同じで、エース層の離職を招く。

推奨は三層配分:①全員に一律(60%)、②役職・責任手当(30%)、③個別評価(10%)。この10%が離職防止の肝だ。

レバー4:採用コストのKPI化

「採用コスト/1人」を月次で追っている施設はほぼない。これを可視化するだけで、紹介会社依存の非合理性が全員に見える化される。CFOが作る資料ではなく、現場会議の冒頭に1枚だけ貼るのが効く。

レバー5:評価制度と昇給の接続

昇給を「年功一律」にしている施設は、人件費が自動膨張する。評価を4段階にして、上位20%は昇給+、下位20%は据え置き、というメリハリをつけるだけで、総額人件費の伸びを年間1%抑制できる。50床特養で年額約200万円の抑制効果だ。

レバー6:ICT化による間接時間の削減

介護記録・申し送り・会議資料の作成時間は、1人あたり月20時間近い。これをICT化すると月10時間に圧縮でき、超過勤務手当の削減に直結する。補助金(ICT導入支援事業)を活用すれば初期費用の半額〜3/4が補助される。

レバー7:間接部門のシェアード化

法人本部がある場合、経理・人事・労務を施設別に持たずシェアード化する。1施設あたり月1人工を削減できると仮定すれば、年間約480万円の節減。3施設以上の法人なら効果は確実である。

インパクト試算(50床特養モデル)

レバー 年額インパクト
派遣削減 +700万円
シフト最適化 +200万円
処遇改善配分 離職率-3pt(定量化困難)
採用コストKPI +110万円
評価制度 +200万円
ICT化 +150万円
間接部門 +300万円相当(法人規模依存)
合計 年額1,600万円

売上5億円規模の特養で経常利益率を3ポイント改善する、という目標は絵空事ではない。1つずつでなく、7つ同時に着手することが重要である。一つだけだと効果が薄く、現場も動かない。


次回は、介護記録のICT化において「紙→ICTの移行コスト」の実数字を解説する。

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