【2026年9月20日 追記】令和8年度の介護報酬改定は、令和8年6月に施行されました。改定率は+2.03%で、内容は①介護職員等処遇改善加算の拡充②基準費用額(食費)1,445円→1,545円の2点です。加算の新設・廃止・要件の厳格化はありません。この記事に「改定の見込み」として書かれている内容は、実際の改定とは異なります。(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)
個別機能訓練加算とは何か?特養における位置づけ
個別機能訓練加算は、特別養護老人ホーム(特養)に入所する利用者一人ひとりの心身の状態に合わせた機能訓練を計画的に行うことを評価する加算です。単なるリハビリテーションの実施ではなく、機能訓練指導員が中心となって計画を立案し、日常生活の中で自立支援や重度化防止につなげる取り組みが求められます。
特養は医療機関ではないため、機能訓練は医療保険のリハビリテーションとは性質が異なります。あくまで生活機能の維持向上を目的とした訓練であり、多職種による日常的な支援と一体的に運用する点が特徴です。この加算を適切に算定できるかどうかは、機能訓練指導員の配置状況と記録の整備状況に大きく左右されます。
個別機能訓練加算IとIIの違いは何か?
個別機能訓練加算はIとIIの二段階で構成されています。両者の違いを整理すると次の通りです。
| 区分 | 主な要件 | 単位数の目安 |
|---|---|---|
| 加算Iイ | 専従の機能訓練指導員を1名以上配置し、個別計画に基づき訓練を実施 | 56単位/日 |
| 加算Iロ | 生活相談員や介護職員等と共同で複数名体制により対応 | 76単位/日 |
| 加算II | 加算Iの要件を満たした上でLIFEにデータを提出し、フィードバックを活用 | 20単位/月 |
加算IIは加算Iを算定していることが前提となるため、単独では取得できません。LIFE(科学的介護情報システム)への提出データには、ADLの評価指標であるBarthel Indexや訓練内容の記録が含まれ、提出後に返送されるフィードバック情報を計画の見直しに活用することが要件です。
機能訓練指導員になれる資格要件とは?
機能訓練指導員として配置できる資格は以下の通りです。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護職員(看護師、准看護師)
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師(一定の実務経験を有する者に限る)
このうち、はり師・きゅう師については機能訓練指導に関する実務経験が要件となっており、無条件で配置できるわけではない点に注意が必要です。また看護職員を機能訓練指導員として配置する場合、看護業務との兼務状況によって専従性の判断が変わるため、勤務表上で訓練時間を明確に区分しておくことが望まれます。
機能訓練指導員の配置基準はどう定められているか?
配置基準は加算区分によって異なります。
加算Iイの場合、専従で1名以上の機能訓練指導員を配置することが必要です。専従とは、原則として他の業務を兼務せず機能訓練に従事することを指しますが、施設の実情に応じて一定の兼務が認められる運用もあるため、事前に運営指導窓口や自治体への確認が有効です。
加算Iロの場合は、機能訓練指導員に加えて生活相談員や介護職員等が共同して個別対応する体制が求められます。この場合、機能訓練指導員単独の専従性よりも、チームとして利用者ごとの訓練を計画的に実施できているかが評価のポイントになります。
配置基準を満たしているかどうかを確認する際の実務チェック項目は次の通りです。
- 機能訓練指導員の資格証の写しを保管しているか
- 勤務形態一覧表に機能訓練指導員としての勤務時間が明記されているか
- 専従要件を満たす場合、他業務との兼務時間が記録上分離されているか
- 訓練の実施記録に指導員の氏名と資格が記載されているか
- 利用者ごとの個別機能訓練計画書が作成され、定期的に見直されているか
2026年改定で何が変わるか?
2026年度の介護報酬改定では、LIFEを活用した科学的介護の推進がさらに強化される見通しです。個別機能訓練加算についても、データ提出項目の追加やフィードバック活用の徹底が求められる可能性があります。また機能訓練指導員の配置に関しては、多職種連携の実効性をより重視する方向で運用要件が精緻化されることが想定されます。改定内容の詳細は告示発出後に必ず一次情報で確認し、計画書様式や記録フォーマットを早期に見直しておくことが重要です。
算定要件チェックリスト
実務担当者が算定前後に確認すべき項目を一覧にまとめました。
- 機能訓練指導員の資格要件を満たしているか
- 専従か共同対応かで加算区分を正しく選択しているか
- 個別機能訓練計画書を利用者ごとに作成しているか
- 計画書の内容を利用者または家族に説明し同意を得ているか
- 計画書を3か月に1回以上見直しているか
- 訓練の実施記録を日々作成しているか
- 加算IIを算定する場合、LIFEへのデータ提出期限を守っているか
- フィードバック情報を次回の計画見直しに反映しているか
よくある算定漏れとその防止策
現場でよく見られる算定漏れのパターンは以下の通りです。
第一に、機能訓練指導員が看護業務と兼務しており、訓練時間の記録が不明確なケースです。勤務表と実施記録を突き合わせて専従性を証明できるようにしておく必要があります。
第二に、個別機能訓練計画書の見直し期限を超過してしまうケースです。3か月ごとの見直しはスケジュール管理表を用いて機械的に運用することで防げます。
第三に、LIFEへのデータ提出が遅延し加算IIが算定できなくなるケースです。提出担当者を固定し、月次の提出タスクをチェックリスト化しておくことが有効です。
個別機能訓練計画書の作成実務
計画書は機能訓練指導員が単独で作成するのではなく、生活相談員、看護職員、介護職員が参加するカンファレンスを経て作成することが望ましいとされています。計画書には利用者の生活歴や本人の希望、具体的な訓練目標、実施頻度、評価指標を記載します。作成後は利用者または家族に説明し、同意を得た上で記録として保管します。
多職種連携はどう進めるか
機能訓練は機能訓練指導員だけで完結するものではなく、日常生活の中で介護職員が訓練の成果を引き継ぐことが重要です。訓練内容を介護職員に共有するための短時間ミーティングを週1回程度設けている施設もあり、情報共有の仕組みを定例化することで訓練効果の定着につながっています。
まとめ
個別機能訓練加算は、機能訓練指導員の資格要件と配置形態を正確に理解した上で、計画書の作成と記録の整備を徹底することで安定的に算定できる加算です。加算Iと加算IIの違いを把握し、LIFEへのデータ提出やフィードバック活用の実務フローを整えておくことが、算定漏れを防ぎ収益の安定化につながります。2026年改定の詳細が公表された際には、告示内容を確認しチェックリストを更新することをお勧めします。
出典
この記事で扱う制度・報酬の一次資料です。数値や要件は公開時点のものなので、最新の内容は原典でご確認ください。
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要(厚生労働省老健局)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675936.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について(厚生労働省)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月15日老老発0315第4号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227990.pdf
