配置基準は条文でどう書かれているか
特別養護老人ホーム(特養)における介護支援専門員の配置は、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第6号に定められています。条文は「一以上(入所者の数が百又はその端数を増すごとに一を標準とする。)」です。
同条第9項は、介護支援専門員は専らその職務に従事する常勤の者でなければならないとしたうえで、入所者の処遇に支障がない場合は当該施設の他の職務に従事できるとしています。
| 項目 | 基準の内容 |
|---|---|
| 配置人数 | 1以上。入所者100またはその端数を増すごとに1を標準 |
| 勤務形態 | 専らその職務に従事する常勤 |
| 兼務 | 入所者の処遇に支障がない場合は施設の他の職務に従事できる |
参考までに、生活相談員は入所者の数が100またはその端数を増すごとに1以上で、こちらは常勤でなければなりません。
基準を満たすこと自体は難しくありません。問題は、100人規模の施設で1人が担う業務の中身です。
業務はケアプラン作成だけではない
施設ケアマネの実務は、制度上のケアプラン作成にとどまりません。
- 入所時のアセスメントと施設サービス計画の原案作成
- 定期的なモニタリングと再評価
- サービス担当者会議の開催と記録作成
- 入退所の調整
- 家族への説明、同意の取得、苦情への対応
- 各種加算の算定要件の確認と記録の整備
- 配置医師、協力医療機関、訪問看護ステーションとの連絡調整
- 実地指導に備えた書類の準備
このうち業務量を押し上げているのが、加算に関わる記録です。特養の加算は、体制で決まるものと入所者ごとの記録で決まるものに分かれますが、後者は算定する種類が増えるほど書類が積み上がります。
| 加算 | 記録として残るもの |
|---|---|
| 科学的介護推進体制加算 | 心身の状況等の情報提出と、計画への活用の記録 |
| 褥瘡マネジメント加算 | 入所時の確認、3月に1回の評価、ケア計画と見直し |
| 排せつ支援加算 | 排せつ状態の評価、支援計画、実績 |
| 看取り介護加算 | 指針の説明と同意、協議の記録、職員研修 |
| 協力医療機関連携加算 | 会議の開催日、参加者、共有した情報、本人の同意 |
| 在宅復帰支援機能加算 | 家族との連絡調整、退所後30日以内の確認と記録 |
いずれも施設ケアマネが関与する場面が多く、記録の質がそのまま算定の可否に直結します。
兼務が負担を増幅させる構造
基準上は兼務が認められているため、施設ケアマネが生活相談員や介護職員のリーダー業務を兼ねる配置は珍しくありません。兼務が問題になるのは、時間の奪い合いが起きるからではなく、優先順位の付け替えが日常的に起きるからです。
介護現場の突発対応は即時性が高く、書類作成は期限が緩やかです。結果としてモニタリングの記録が後回しになり、月末にまとめて書く運用が定着します。まとめ書きは記録の日付と事実の日付がずれやすく、実地指導で最も指摘されやすい形です。
兼務の可否を判断するときは、人数ではなく「日次で発生する記録を当日中に締められるか」を基準にしてください。
令和8年度の制度変更はどう効くか
令和8年度の介護報酬改定は令和8年6月に施行されました。改定率はプラス2.03パーセントで、中身は介護職員等処遇改善加算の拡充と、食費の基準費用額を1,445円から1,545円へ引き上げる2点です。加算の新設や廃止、要件の厳格化はありません。
施設ケアマネの業務に関係する変更としては、協力医療機関連携加算の定期的な会議の開催頻度の見直しがあります。従来は概ね月1回以上(電子的システムで協力医療機関が入所者の情報を随時確認できる体制がある場合は年3回以上)でしたが、情報通信技術を用いた情報共有を行う場合は年1回、行わない場合は原則年3回に見直されました。
この見直しの背景には、改定検証調査で協力医療機関連携加算を算定できない理由として「定期的な会議の負担が重く、会議を行えていない」が最も多く、介護老人福祉施設で46.3パーセントだったという実態があります。会議の準備と記録は施設ケアマネに集まりやすい業務なので、頻度の見直しは負担軽減の方向に働きます。
負担を軽減する打ち手
自施設の体制を点検するためのチェックリストです。
- 施設サービス計画の作成を支援するソフトを導入しているか
- 加算の算定に関する書類作成の一部を事務職員へ分担しているか
- モニタリング記録をテンプレート化しているか
- サービス担当者会議の運営を多職種で分担しているか
- 兼務業務の比率を定期的に見直しているか
- 家族対応の窓口を生活相談員と分けているか
- 実地指導向けの書類を日常的に整備し、直前対応をなくしているか
- 介護支援専門員の時間外勤務を月次で把握しているか
半分以上ができていない場合は、業務が1人に集中している可能性が高い状態です。記録のテンプレート化と、加算に関わる書類の分担は比較的短期間で効果が出ます。
増員か効率化かの判断基準
増員を検討するときは、入所者数だけで判断しないでください。判断材料になるのは次の3つです。
- 看取り対応の件数(指針の説明、協議、研修の記録が発生する)
- 入所者ごとに算定している加算の種類と対象者数
- 入退所の件数(アセスメントと計画の作り直しが発生する)
これらを月次で数えておくと、増員の必要性を人事に数字で説明できます。
まとめ
特養の介護支援専門員は、入所者100人またはその端数を増すごとに1を標準とする配置で、専従常勤が原則ながら兼務も認められています。基準を満たしていても、加算に関わる記録と入退所調整が重なると1人では回りません。令和8年度は要件の厳格化はなく、協力医療機関連携加算の会議頻度はむしろ緩和されました。まずは日次の記録を当日中に締められているかを確認し、記録様式の標準化と書類の分担から着手するのが現実的です。
出典
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第21号)介護福祉施設サービス https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0255&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html
- 社会保障審議会介護給付費分科会 第255回 資料2「協力医療機関連携加算に係る要件変更について(報告)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001681967.pdf
