
TikTok採用で若手応募20名獲得、認知症グループホームの3ヶ月実践記録とは
監修: 中村 康宏(株式会社Anchor 代表取締役 / 医師)
TL;DR
認知症グループホームがTikTokを活用した採用広報により、3ヶ月間で若手応募者20名を獲得した事例を紹介します。週3〜4本の継続投稿、現場スタッフの負担を抑えた撮影運用、既存媒体との併用がポイントでした。費用対効果は従来の求人広告費と比較して1名あたりの獲得コストを大幅に下げる結果となりました。
なぜグループホームの採用にTikTokが有効なのか
介護業界の有効求人倍率は依然として高く、特に認知症グループホームのような小規模施設では大手求人媒体だけでは応募が集まりにくい状況が続いています。厚生労働省の介護労働実態調査によると、介護職の離職理由の上位には人間関係や職場の雰囲気に対する不満が挙げられており、応募段階で職場のリアルな空気感を伝えられるかどうかが定着にも影響します。
TikTokは10代後半から20代の利用者が多く、求人媒体を能動的に検索しない層にもリーチできる点が特徴です。文字情報中心の求人票では伝わりにくい職場の雰囲気やスタッフの人柄を、短尺動画で直感的に届けられることが、若手応募者の増加につながったと考えられます。
事例施設の概要と取り組み前の状況
今回取り上げるのは入居定員18名、職員数15名の認知症グループホームです。取り組み開始前の半年間は求人媒体経由の応募が月平均1件程度にとどまり、内定辞退も含めると採用に至ったのは半年で2名という状況でした。
取り組み前の課題を整理すると次の通りです。
| 課題 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 応募数不足 | 月平均応募1件、6ヶ月で2名採用 |
| 応募者層の偏り | 40代以降の経験者応募が中心 |
| 職場の魅力発信不足 | 求人票に写真1〜2枚のみ |
| 採用コスト | 求人媒体費用が月8万円で成果に対して割高 |
TikTok運用の具体的な進め方
投稿体制はどう組んだのか
運用開始にあたり、管理者が中心となり週1回15分程度の企画会議を実施しました。撮影は業務の合間に5分以内で完結させることをルール化し、現場負担を最小限に抑えています。
投稿体制は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投稿頻度 | 週3〜4本 |
| 撮影担当 | 20代スタッフ2名を中心にローテーション |
| 編集担当 | 管理者が編集アプリで簡易編集 |
| 投稿時間 | 平日夜19時〜21時が中心 |
| 動画尺 | 15〜30秒 |
どのようなコンテンツが反響を得たのか
3ヶ月間で投稿した約45本のうち、再生数が伸びた投稿には共通点がありました。
- 職員同士の自然な会話シーン
- 一日のスケジュールを紹介する動画
- 利用者との関わりが伝わる場面(個人が特定されない配慮あり)
- 給与や休日制度をテロップで簡潔に紹介する動画
- 施設の設備や食事風景の紹介
特に給与や休日制度を数字で明示した投稿は保存数が多く、就職活動中の若年層が条件面を重視して比較検討している傾向がうかがえました。
個人情報とプライバシーへの配慮
利用者が映り込む場面では事前に家族の同意を得た上で撮影し、顔がはっきり映る場合はぼかし加工を施しています。職員についても顔出しの可否を本人の意思に委ね、無理に出演を求めない運用としました。
3ヶ月間の成果はどう推移したのか
成果の推移は以下の通りです。
| 期間 | フォロワー数 | 応募数 | 内定数 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 320人 | 3名 | 1名 |
| 2ヶ月目 | 890人 | 7名 | 2名 |
| 3ヶ月目 | 1650人 | 10名 | 3名 |
| 合計 | - | 20名 | 6名 |
応募者20名のうち、20代が14名、30代が5名、40代が1名と若年層への訴求効果が明確に表れています。取り組み前は40代以降の応募が中心だったことと比較すると、応募者層が大きく変化しました。
費用対効果はどの程度改善したのか
従来の求人媒体では月8万円の掲載費用で応募1件程度という状況でした。TikTok運用では撮影機材は既存のスマートフォンを使用し、編集アプリの有料版利用料として月1000円程度、企画会議の人件費を含めても月あたりの実質コストは3万円前後に収まっています。
応募1件あたりのコストで比較すると、求人媒体経由が約8万円だったのに対し、TikTok経由は約1500円となり、獲得コストは50分の1程度まで下がった計算になります。ただし採用担当者の企画立案や撮影調整にかかる時間的コストは別途発生しているため、完全な代替ではなく併用が現実的です。
定着率への影響はあったのか
TikTok経由で採用した6名のうち、入職から6ヶ月時点で在籍しているのは5名で定着率は82%でした。取り組み前の求人媒体経由の定着率(過去1年平均75%)と比較しても遜色ない水準です。動画を通じて職場の雰囲気を事前に把握した上で応募していることが、ミスマッチの軽減につながった可能性があります。
運用開始前に確認すべきチェックリスト
TikTok採用広報を始める前に、以下の項目を確認しておくことをおすすめします。
- 法人として個人が特定される投稿に関する同意取得ルールが整備されているか
- 撮影に協力するスタッフの負担が業務時間内で完結する仕組みになっているか
- 投稿内容を確認する承認フローが決まっているか
- 炎上リスクを想定した対応マニュアルがあるか
- 求人媒体や採用サイトへの導線が動画内に設計されているか
今後の課題と展望
3ヶ月という短期間での成果は明確でしたが、継続運用における課題も見えてきました。投稿ネタの枯渇、撮影担当スタッフの負担偏り、退職スタッフの取り扱いなどは事前にルール化しておく必要があります。また効果測定の指標としてフォロワー数だけでなく、応募経路の追跡やエントリーフォームでの流入元記録を徹底することが、継続的な改善には欠かせません。
まとめ
TikTokを活用した採用広報は、認知症グループホームのような小規模施設でも低コストで若手応募者の獲得につながる可能性を持っています。重要なのは継続できる運用体制の設計と、現場スタッフの負担を最小限に抑える工夫です。求人媒体との併用を前提に、まずは週数本の投稿から始めてみることが現実的な一歩といえます。