特養でポリファーマシーが起こりやすいのはなぜ?

特別養護老人ホーム(特養)の入所者は複数の慢性疾患を抱えていることが多く、入所前に複数の医療機関からそれぞれ処方を受けてきた結果、入所時点ですでに多剤併用となっているケースが珍しくありません。さらに入所後も、認知症の行動・心理症状(BPSD)や不眠への対応で睡眠薬・抗精神病薬などの向精神薬が追加され、処方が積み上がる構図があります。

観点内容
多剤化の主な背景複数科受診による処方の併存、慢性疾患の重複、BPSD・不眠への向精神薬追加
減薬の主導者配置医師・主治医(薬剤師が処方見直しを支援)
主なリスク転倒・骨折、誤嚥、過鎮静、食欲低下、便秘、意識レベルの変動

ポリファーマシーとは何か?何剤から問題になる?

ポリファーマシーとは、必要以上に多くの薬剤が処方され、有害事象や服薬管理の負担が増している状態を指します。厚労省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」では6剤以上で有害事象リスクが有意に上昇するとされています。ただし剤数はあくまで目安であり、問題の本質は「その処方が今の本人の状態に合っているか」です。

特養の現場では、次のようなサインが処方見直しのきっかけになります。

  • 日中の傾眠・ふらつきが目立ち、転倒が増えている
  • 服薬後に食欲低下や便秘が続く
  • 嚥下機能が低下し、服薬時のむせが増えている
  • 処方薬の種類が半年で増加している

減薬支援の進め方は?5ステップで解説

ステップ1:現状の服薬状況を可視化する

お薬手帳・処方箋・服薬記録をもとに、看護職員が中心となって成分名・用量・処方開始日を一覧化します。介護職員が日々記録する体調変化(表情・活動量・食事量・睡眠)も併せて整理します。

ステップ2:配置医師・薬剤師に情報共有する

施設側で作成した服薬状況シートを配置医師や主治医に提示し、減薬の可否を医学的に判断してもらいます。回診・往診やオンライン診療の機会に合わせて共有すると、日常業務の中に組み込みやすくなります。

ステップ3:減薬計画を段階的に設定する

急な減薬は離脱症状や症状の再燃・悪化のリスクがあるため、通常は1剤ずつ・数週間〜数ヶ月単位で漸減します。計画のスケジュールは看護計画・施設サービス計画に反映し、看護職員・介護職員の間で共有します。

ステップ4:モニタリングと記録を継続する

減薬期間中は次の項目を重点的に記録します。

  • 睡眠状況・食欲の変化
  • 不穏・不安・幻覚など精神症状の変化
  • 転倒・ふらつきの有無
  • バイタルサインの変化
  • 服薬アドヒアランス(飲み忘れ・拒薬)

ステップ5:評価と計画修正を行う

一定期間後に医師と再評価し、継続・中止・元の用量への戻しを判断します。この一連のPDCAを記録として残すことが、事故予防にも運営指導での説明責任にもつながります。

特養で減薬支援を進める際の注意点は?

  • 介護職員が単独で判断しない:服薬調整は医師の指示に基づく行為であり、介護職員・看護職員は観察と報告が役割です。
  • 家族への説明を丁寧に行う:減薬に不安を持つ家族も多いため、経過を共有し同意形成を図ります。
  • 急変時対応を事前に整備する:減薬中に症状悪化が起きた場合の連絡フロー・受診手順を明文化しておきます。夜間帯の連絡先(配置医師・オンコール・協力医療機関)まで具体的に決めておくことが重要です。

向精神薬の見直しに精神科の視点はなぜ必要か?

BPSDや不眠への対応で処方された睡眠薬・抗不安薬・抗精神病薬は、漫然と継続されやすい一方、転倒や過鎮静など有害事象の一因にもなります。向精神薬の減薬には症状再燃のリスク評価が欠かせないため、精神科医の関与があると計画の精度が上がります。特養では、精神科を担当する医師による定期的な療養指導を評価する加算も設けられており、要件を満たせば算定の対象になり得ます。株式会社Anchorでは、施設単位の精神科オンライン診療(月2回)と夜間オンコールの仕組みを通じて、向精神薬の見直しを含む医療連携体制づくりを支援しています。

まとめ

  • ポリファーマシーは6剤以上の多剤併用でリスクが高まる状態。剤数だけでなく処方内容と本人の状態で評価する
  • 減薬支援は「可視化→共有→計画→モニタリング→評価」の5ステップで進める
  • 介護職員・看護職員の役割は観察・記録・報告であり、減薬判断は医師が行う
  • 向精神薬の見直しには精神科医の関与が有効で、オンライン診療とオンコール体制の組み合わせが安全な減薬支援を後押しする