
認知症専門ケア加算IVを5分で整理|2026年改定のGH算定要件と収益試算
監修: 中村 康宏(株式会社Anchor 代表取締役 / 医師)
TL;DR
- 2026年介護報酬改定で、認知症専門ケア加算に新区分「IV」が新設される方向で検討が進んでいます
- GHでの算定には、既存要件に加えてケアの実践プロセス記録と効果測定の仕組みが求められる見込みです
- 準備には研修修了者の確保に半年から1年かかるため、2025年内の着手が現実的なラインです
認知症専門ケア加算IVとは何か
認知症専門ケア加算は、認知症介護の専門性を高めている事業所を評価する加算として、現行制度ではIとIIの2区分が設けられています。2026年改定の議論では、これに加えて新たな上位区分としてIVの新設が検討されています。
名称に「III」を飛ばして「IV」とされている点には理由があります。介護保険の他サービス区分ですでにIIIが別の文脈で使われているため、混同を避ける整理と見られており、実質的には現行IIの上位互換として位置づけられる想定です。
審議会資料等で示されている方向性を整理すると、次のような特徴があります。
| 項目 | 現行I | 現行II | 新設IV(想定) |
|---|---|---|---|
| 対象 | 全入居者 | 専門ケアが必要な入居者 | 専門ケアが必要な入居者 |
| 人員要件 | 研修修了者1名以上 | 専門研修修了者1名以上 | 専門研修修了者に加え実践指導者を配置 |
| 記録要件 | ケア計画への反映 | 事例検討の実施記録 | ケア効果の定量的な記録・報告 |
| 単位数目安 | 3単位/日 | 4単位/日 | 6〜7単位/日程度と想定 |
単位数はあくまで現時点の議論を踏まえた目安であり、正式決定は2026年3月前後の告示を待つ必要があります。
なぜ新区分が必要とされているのか
背景には、認知症グループホームの入居者の重度化があります。厚生労働省の調査によれば、GH入居者のうち認知症日常生活自立度IIIa以上の割合は年々上昇しており、直近の調査では全体の6割を超える水準に達しています。行動・心理症状、いわゆるBPSDへの対応が現場の負担として大きくなっている実態が、専門性評価の強化という政策方向につながっています。
また、既存の認知症専門ケア加算IIの算定率が全国平均で3割程度にとどまっているというデータもあり、上位区分を新設することで専門性の高い事業所を可視化し、利用者や家族の施設選択に役立てる狙いもあるとされています。
GHでの算定要件はどう変わるのか
現時点の情報を基に、GHが押さえておくべき想定要件を整理します。
人員配置に関する想定要件
- 認知症介護実践者研修または実践リーダー研修修了者を常勤で1名以上配置
- 加えて、認知症介護指導者研修修了者または同等の実践経験を持つ職員を非常勤でも配置
- 夜勤帯を含めた研修修了者の配置バランスの明記
記録・運用に関する想定要件
- BPSDの発生頻度と対応内容を月次で記録
- ケア変更前後での状態変化を簡易評価指標で記録
- 多職種によるカンファレンスを月1回以上実施し議事録を保管
研修・体制に関する想定要件
- 職員全体に対する認知症ケアの内部研修を年2回以上実施
- 研修参加率を記録し、未参加者へのフォロー体制を明示
これらはあくまで現段階の議論を基にした整理であり、確定版とは異なる可能性があります。ただし、方向性としては専門職配置の量的要件から、ケアの質を示す記録とプロセスの要件へと重心が移っていることは共通して読み取れます。
収益インパクトはどの程度か
仮に新設IVの単位数を1日6単位、入居定員18名のGHで算定した場合の試算は次の通りです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 想定単位数 | 6単位/日 |
| 対象人数 | 18名(全入居者が対象と仮定) |
| 1単位あたり単価 | 10円強(地域区分により変動) |
| 月間収益増(概算) | 約32,000円 |
| 年間収益増(概算) | 約39万円 |
1ユニット規模のGHであれば年間30万円台後半、2ユニット規模であれば70万円前後の増収が見込める試算です。ただし、対応する人件費や記録業務の増加分を差し引いた実質的な収支改善効果は、個別の体制によって変わります。
算定に向けた準備ステップ
実務担当者が今から着手できる準備を、時系列で整理します。
-
現状把握(1か月目)
- 職員の研修修了状況を一覧化する
- 現行の認知症専門ケア加算IIの算定状況を確認する
-
人員計画の策定(2〜3か月目)
- 未修了職員の研修受講計画を立てる
- 実践リーダー研修は自治体開催が年1〜2回のため申込時期を確認する
-
記録体制の整備(4〜6か月目)
- BPSD記録の様式を見直す
- ケア効果を数値化できる簡易評価シートを導入する
-
試行運用(7〜9か月目)
- 新様式でのカンファレンスを試行し、記録の負担感を確認する
- 職員へのヒアリングで運用上の課題を洗い出す
-
本申請準備(10〜12か月目)
- 改定告示の内容と自施設の体制を突き合わせる
- 必要書類を整備し、算定開始時期を確定する
研修修了者の確保には半年から1年程度を要するケースが多いため、2026年4月からの算定を目指す場合、2025年内の着手が現実的な目安となります。
準備段階で起こりやすい失敗
現場でよく見られるつまずきを整理します。
- 研修受講を1名に集中させ、退職や異動で要件を満たせなくなる
- 記録様式を導入したものの、記入項目が多く現場が形骸化する
- カンファレンスの実施はしているが議事録の保管が不十分で監査時に確認できない
- 単位数の増加分だけを見て、記録業務にかかる人件費を試算に入れていない
特に記録の形骸化は、加算算定後の実地指導で指摘を受けやすいポイントです。項目数を絞り、現場が続けられる粒度に調整することが重要です。
まとめ
認知症専門ケア加算IVは、2026年改定における重要な新設項目として注目されています。現行の人員配置中心の評価から、ケアプロセスと効果の可視化を重視する方向へと軸足が移る見込みです。GHとしては、研修計画の前倒しと記録体制の簡素な設計を両輪で進めることが、算定成功のポイントになります。正式な告示内容が公表され次第、要件の細部を再確認し、自施設の体制と照らし合わせる作業を忘れずに行ってください。