
認知症ケア加算IIの算定要件と取りこぼしを防ぐ実務
認知症ケア加算IIは、特養における認知症ケアの質を評価する加算である。1日4単位と金額は小さいが、年間で見ると50床特養で約75万円の収益になる。しかも、算定要件を満たすプロセス自体が認知症ケアの質を底上げするため、取得の意義は金額以上に大きい。
加算の全体像
認知症ケア加算は現在、特養で算定可能なI〜IVに分かれている。
- 認知症専門ケア加算I:3単位/日
- 認知症専門ケア加算II:4単位/日
IIはIの要件に加え、認知症介護指導者研修修了者の配置が求められる。
算定要件の3本柱
- 認知症ケアに関する実践研修修了者の配置
- 認知症ケアに関する会議の定期開催
- 認知症の方への個別ケア計画と実施
このうち会議の開催と記録で取りこぼしが多発している。
取りこぼしポイント1:研修修了者の確保
実践者研修(旧基礎研修)を修了した職員を、対象者20人に1人以上配置する必要がある。誰が研修を受けたか、修了証が手元にあるか、現在も在籍しているかを年1回点検する必要がある。
退職で人数が足りなくなった時点で加算剥奪となるため、常に「余裕ある配置」を意識する。目安は要件の1.2倍以上。
取りこぼしポイント2:会議記録の整備
認知症ケアに関する会議の開催記録が曖昧で指摘を受けるケースが多い。会議記録に必ず含めるべき項目:
- 開催日時
- 参加者(氏名・職種)
- 議題
- 各認知症利用者の状況
- 決定事項・アクション
- 次回開催予定
月1回以上の開催が推奨される。
取りこぼしポイント3:個別ケア計画
認知症利用者の個別ケア計画が、一般のケアプランと別に必要かどうかで迷う施設が多い。結論:ケアプラン内に認知症ケアの項目を明確に記載していればOK。別冊にする必要はない。
ただし「認知症の症状評価」「行動・心理症状(BPSD)への対応」「家族への支援」の3点は必ず記載する。
BPSDへの対応プロトコル
BPSD(徘徊・不穏・暴言・妄想)への対応は、個別性が高く標準化が難しい。しかし、最低限次のプロトコルは文書化しておく。
- 発生状況の観察と記録
- 身体要因の除外(痛み・脱水・感染・薬剤)
- 環境要因の調整
- 非薬物的介入の優先
- 薬物療法は最終手段
特に「身体要因の除外」が最重要。BPSDの多くは身体不調のサインであり、それを見逃して向精神薬を投与するのは本末転倒である。
家族支援の記録
認知症ケア加算では、家族への支援状況も記録が求められる。具体的には:
- 家族への症状説明
- 家族会・面談の実施
- 家族教育(認知症の進行と対応)
これらを1ヶ月に1度は何らかの形で実施し、記録する。
2026年改定を見据えて
2026年改定では、認知症ケアの質評価がさらに厳格化される見込み。BPSDスケールによる定量評価、家族満足度調査の実施、非薬物療法の記録などが要件に加わる可能性がある。
今のうちからこれらを整備しておけば、次期改定時に上位加算を狙える体制になる。
次回は、短期入所と本入所の比率最適化を解説する。