A
Anchor Media
看取り介護加算の算定要件と実務運用:家族合意書の作り方まで
特養2026-04-07

看取り介護加算の算定要件と実務運用:家族合意書の作り方まで

看取り介護加算は、特養にとって収益面・理念面の両方で重要な加算である。しかし「算定漏れが常態化している」「家族合意書が曖昧」「医師連携が不十分」といった課題を抱える施設は多い。本稿では、算定要件を整理した上で、実務で最も落とし穴になりやすい3ポイントを解説する。

加算の全体像

看取り介護加算は現在I・IIに分かれ、死亡日前30日を基点に段階的に単位が設定されている。重要なのは**「いつから算定を開始できるか」の判断基準**である。

  • 死亡日以前31日〜45日:72単位/日
  • 死亡日以前4日〜30日:144単位/日
  • 死亡日前日・前々日:680単位/日
  • 死亡日:1,280単位/日(加算II)

50床特養で年間看取り数10件、平均算定期間25日とすると、年額約200万円の収益インパクトがある。

算定要件の骨格

大枠は次の5点である。

  1. 医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと判断
  2. 医師・看護師・介護職員等が共同で作成した医学的所見記録がある
  3. 本人・家族の同意を文書で取得
  4. 看取り指針の整備と説明
  5. 多職種による計画的な対応

問題は**「2」と「3」が形骸化しやすい**ことだ。特に医師の記録が電子カルテに断片的に残るだけで、特養側の記録システムに反映されていないケースが監査で指摘される。

落とし穴1:医師所見の記録形式

嘱託医が週1回の回診で「看取り移行」と口頭で言っても、それだけでは要件を満たさない。「日付・医師名・医学的根拠・予後の見通し」が揃った記録が必要である。推奨はSOAP形式で、少なくとも次のように書く。

2026/4/3 嘱託医○○
S: 食事量3割、苦痛表情なし
O: BP 98/52, SpO2 92%, 意識レベル低下傾向
A: 全身状態の緩徐な低下。回復見込み乏しく看取り期と判断
P: 家族説明実施、ACP更新、看取り介護加算開始

この記録があれば、実地指導でも指摘されない。

落とし穴2:家族合意書のテンプレート

合意書で最も多い指摘は「抽象的すぎる」こと。「看取りに同意します」だけでは不十分で、次の項目を含める必要がある。

  • 現在の医学的状態の説明
  • 今後予測される経過
  • 延命処置(経管栄養・点滴・搬送)の方針
  • 急変時の連絡方法・連絡先
  • 合意書作成日と医師・家族・施設長の署名
  • 方針変更時の再合意プロセス

特に**「方針変更時の再合意プロセス」を書いておくと、家族間で意見が割れた時の調整がスムーズになる**。

落とし穴3:多職種会議の記録

看取り介護加算は「多職種協働」が要件である。会議を開いた記録がないと算定取消リスクがある。最低でも開催日・参加者・協議内容・決定事項を1枚で記録する。開催頻度は月1回以上、急変時はその都度。

算定漏れを防ぐチェックリスト

  • 嘱託医の看取り移行判断が記録されているか
  • 家族合意書に延命処置の方針が明記されているか
  • 看取り指針が更新され、掲示されているか
  • 多職種会議の議事録があるか
  • 入居者・家族への精神的ケアの記録があるか
  • 看取り期間中の24時間連絡体制が機能しているか
  • 死亡後のデスカンファが実施されているか
  • 記録システムに「看取り期フラグ」が立っているか

理念と収益の両立

看取り介護加算は「お金のために算定するもの」ではない。しかし、しっかり算定することが看取りの質を担保する装置でもある。なぜなら、加算要件を満たすためには記録・会議・家族合意という本質的なプロセスが必要だからだ。算定漏れの施設ほど、看取りの質も曖昧になりがちだ。


次回は、ユニットケアの収益性を数字で分析する。

この加算、御施設でも取得できるかもしれません。

無料の加算診断を実施しています。

株式会社Anchor

TEL: 03-4400-3511