特養の医療体制は3つの層でできている

特別養護老人ホーム(特養)の医療連携は、次の3つを組み合わせて成立します。

  1. 配置医師(人員基準で置くことが求められる医師。入所者の健康管理と療養上の指導を行う)
  2. 協力医療機関(病状の急変等に備えてあらかじめ定めておく医療機関)
  3. 看護職員による24時間連絡体制

この3層がそれぞれ別の加算に対応しています。

加算単位数何を評価しているか
看護体制加算(Ⅱ)イ13単位/日24時間連絡体制と、人員基準に1名を加えた看護職員配置
看護体制加算(Ⅱ)ロ8単位/日同上(入所定員51人以上の施設)
配置医師緊急時対応加算1回につき325・650・1,300単位配置医師が時間外に訪問して診療したこと
協力医療機関連携加算50単位/月または5単位/月協力医療機関と病歴等を共有する会議の定期開催

なお、「医療連携加算」「医療連携体制加算」は、特養の介護福祉施設サービスには置かれていません。医療連携体制加算は認知症対応型共同生活介護など、別のサービスの項目です。特養の資料でこの名称を見かけたら、対象サービスの取り違えを疑ってください。

加算には依存関係がある

3つの加算はそれぞれ独立していません。配置医師緊急時対応加算の告示には、看護体制加算(Ⅱ)を算定していない場合は算定しない、というただし書きがあります。つまり順序は次のようになります。

  1. 看護職員を人員基準に1名を加えた数以上に配置し、24時間連絡できる体制を確保する
  2. 看護体制加算(Ⅱ)を届け出る
  3. 配置医師との取決めと24時間対応体制を整え、配置医師緊急時対応加算を届け出る
  4. 協力医療機関が3要件を満たしているかを確認し、定期的な会議を開いて協力医療機関連携加算を算定する

看護職員の配置を先に動かさないと、夜間対応の加算までたどり着けない構造になっています。

配置医師との取決めに何を書くか

配置医師緊急時対応加算の施設基準は、配置医師と施設の間で具体的な取決めをしていることを求めています。取決めに含める内容は施設基準に列挙されています。

  • 入所者に関する注意事項や病状等についての情報共有の方法
  • 曜日や時間帯ごとの医師との連絡方法
  • 診療を依頼する場合の具体的な状況

加えて、複数名の配置医師を置くか、配置医師と協力医療機関の医師が連携して施設の求めに応じ24時間対応できる体制を確保することが求められます。配置医師が1人の施設は、協力医療機関の医師と組む形を先に作る必要があります。

契約書に落とし込むときは、次の項目まで書き切っておくと運用時に迷いません。

  • 定期の診療(回数、曜日、時間帯)
  • 時間外に施設が診療を求める判断基準(発熱、酸素化低下、転倒後の意識変容など)
  • 連絡手段と一次連絡先、つながらない場合の次の連絡先
  • 往診を依頼せず電話指示で対応する場合の範囲
  • 診療録および施設側の記録の分担
  • 協力医療機関の医師が対応する時間帯と、その引き継ぎ方法
  • 報酬の支払条件

医療保険の扱いが在宅とは違う

特養の医療連携でつまずきやすいのが、医療保険側の取扱いです。特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて(平成18年保医発第0331002号)は、特養に特有の制限を置いています。

  • 保険医が配置医師でない場合は、緊急の場合、または患者の傷病が配置医師の専門外にわたるため特に診療を必要とする場合を除き、みだりに診療を行ってはならない
  • 特養の入所者については、末期の悪性腫瘍と看取りの場合を除き、在宅患者訪問診療料は算定の対象としない
  • 訪問看護基本療養費や訪問看護指示料も、末期の悪性腫瘍である場合を除き算定の対象としない
  • 特養の職員(看護師、理学療法士等)が行った医療行為については、診療報酬を算定できない
  • 入所中の患者に対して往診して通院・在宅精神療法などを行った場合は、その精神療法が必要な理由を診療録に記載する

在宅医療のモデルをそのまま特養に持ち込むと、この制限に当たります。特養では「訪問診療で定期的に回る」形ではなく、配置医師による健康管理と、必要時の往診という形が制度上の基本になります。精神科の関与も、往診と通院・在宅精神療法で組み立て、必要理由を診療録に残すのが道筋です。

記録は3か所に分かれる

医療連携の記録は、置き場所が3つに分かれます。どれが欠けても加算の根拠が弱くなります。

記録主な内容関係する加算
施設の看護記録・介護記録発見時刻、状態、医師への連絡時刻、診療を求めた判断根拠、経過観察配置医師緊急時対応加算
医師の診療録診療の内容、診療を行った理由、精神療法が必要な理由配置医師緊急時対応加算
会議記録開催日、参加者、共有した病歴等の情報、本人の同意協力医療機関連携加算

実地指導で問われるのは、この3つの整合です。看護記録に「23時45分 医師来所」とあるのに診療録の時刻が違う、会議は開いたが参加者と共有内容が残っていない、といったずれが指摘につながります。夜間対応はその場で記録を完結させ、翌朝の申し送りで突き合わせる運用にしておくのが確実です。

体制を見直す順番

医療連携の体制を組み直すときは、次の順で確認すると手戻りが出ません。

  1. 看護職員の常勤換算数が、人員基準の数に1を加えた数以上あるか
  2. 24時間連絡体制を自施設だけで確保するか、訪問看護ステーション等との連携で確保するか
  3. 配置医師との取決めが文書になっているか、時間外の連絡方法が曜日・時間帯ごとに決まっているか
  4. 協力医療機関が相談対応・診療・入院受入の3要件を満たしているか、満たさない要件を別の医療機関で補えるか
  5. 会議の記録様式が整っているか

まとめ

特養の医療連携は、配置医師・協力医療機関・24時間の看護連絡体制という3層で成り立ち、それぞれ看護体制加算、配置医師緊急時対応加算、協力医療機関連携加算に対応します。加算には依存関係があり、看護職員の配置と24時間連絡体制が土台になります。医療保険側では在宅患者訪問診療料が原則として対象外になるなど、在宅とは異なる扱いが並んでいるため、契約と記録は特養の制度に合わせて設計してください。

出典