
特養2026-04-07
特養の個人情報保護とプライバシー:2026年改定で強化される実務
特養は、医療情報・家族関係・経済状況など、極めて機微な個人情報を大量に扱う。個人情報保護の不備は、訴訟・行政処分・評判低下の三重のリスクをもたらす。本稿では、特養における個人情報保護の実務と、2026年改定で強化される項目を解説する。
特養が扱う個人情報
- 基本情報(氏名・住所・家族構成)
- 医療情報(病名・処方・既往歴)
- 介護情報(ADL・認知機能・ケア内容)
- 経済情報(年金・預金・費用負担)
- 家族情報(関係性・連絡先・背景)
これらは要配慮個人情報に該当し、取得・利用・第三者提供には明示的な同意が必要。
同意書の設計
入所時の同意書に含めるべき項目:
- 利用目的の明示
- 利用範囲(職員・医師・ケアマネ・行政)
- 第三者提供の同意
- 保管期間
- 開示請求の方法
- 苦情窓口
包括同意ではなく項目別同意が望ましい。特に「SNSでの写真掲載」「研修資料での事例紹介」は個別同意を取る。
記録の管理
紙・電子の両方で次のルールを徹底する。
- 保管場所の明示(鍵付き書庫・アクセス権限管理)
- 持ち出し禁止(USBメモリ・紙の持ち帰り禁止)
- 廃棄ルール(シュレッダー・データ消去)
- 保管期間(介護記録は2年、医療情報は5年)
ICT化した施設ほど、アクセス権限管理が甘い傾向がある。全職員がすべての記録にアクセスできる状態は避けるべき。
SNSと個人情報
前の記事で紹介したSNS運用では、特に注意が必要。
- 入所者の顔・氏名を映さない
- 背景に他の入所者が映り込まないか確認
- 家族の了承を得た写真のみ使用
- 投稿前に複数人でチェック
一度SNSに載せた情報は完全に消せないことを肝に銘じる。
職員教育
個人情報保護の研修を年1回以上実施する。研修内容:
- 個人情報保護法の基礎
- 特養での具体例
- 漏えい事例の紹介
- SNS利用のルール
- 持ち出し禁止の徹底
新人研修で必ず含める。中途採用者も入職時に研修を受ける。
漏えい発生時の対応
万一、個人情報漏えいが発生した場合の対応:
- 被害範囲の特定
- 個人情報保護委員会への報告(重大漏えい時は義務)
- 本人・家族への通知
- 再発防止策の策定
- 公表の検討
「黙って済ませる」は法的リスクが高い。報告義務を果たすこと。
家族対応での個人情報
意外に多いのが「別居の家族への情報提供」問題。たとえば長男が同居、次男が別居の場合、次男への情報提供は本人同意が必要になる。
ルール:
- 主たる連絡先を入所時に決定
- 主たる連絡先以外への情報提供は都度確認
- 家族間の紛争に巻き込まれない姿勢
2026年改定での強化
2026年改定で強化される見込みの項目:
- 個人情報漏えい時の報告義務の厳格化
- マイナンバー連携の対応
- 電子記録のセキュリティ基準
- BCP時の個人情報対応
今のうちから体制を整備しておくことが、次期改定への備えになる。
チェックリスト
- 同意書が項目別に整備されているか
- アクセス権限管理がされているか
- 職員教育を年1回以上実施しているか
- SNS運用ルールが文書化されているか
- 漏えい時の対応フローがあるか
- 外部委託先との契約に個人情報条項があるか
- 廃棄ルールが徹底されているか
次回は、特養の経理とキャッシュフロー管理を解説する。