
特養2026-04-07
特養のキャッシュフロー管理:月次資金繰りで倒産を防ぐ
「決算は黒字なのに現金がない」——これは特養経営でも起こり得る。介護報酬は2ヶ月遅れで入金されるため、売上と現金の時差が大きい。本稿では、月次キャッシュフロー管理の実務と、資金ショートを防ぐ3つのレバーを解説する。
介護報酬の入金サイクル
介護報酬は次のサイクルで入金される。
- サービス提供月
- 翌月10日までに国保連に請求
- サービス提供月の翌々月末に入金
つまり、4月分のサービスは6月末に入金される。2ヶ月分の運転資金を常に確保しておく必要がある。
必要運転資金の計算
50床特養の場合:
- 月次売上:約5,000万円
- 人件費・委託費等:約4,500万円
- 2ヶ月分運転資金:約1億円
手元現金が1億円を下回ると資金繰りリスク。常時1.5億円程度を維持するのが安全圏だ。
月次キャッシュフロー表
次の項目で月次管理する。
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| 期首現金 | |||
| 入金(介護報酬) | |||
| 入金(居住費等) | |||
| 出金(人件費) | |||
| 出金(委託費) | |||
| 出金(その他) | |||
| 期末現金 |
Excelでも十分。重要なのは毎月欠かさず作ること。
資金ショートを防ぐ3つのレバー
レバー1:早期入金の交渉
国保連の入金は動かせないが、家族からの居住費・食費は早期入金を依頼できる。月末払い→月初払いに変更するだけで、資金繰りが20〜30日改善される。
レバー2:支払いサイトの延長
委託費・リース料の支払いサイトを延長する。現金払い→翌月払い、翌月払い→翌々月払いに交渉すると、運転資金が大きく改善する。
相手の経営を圧迫しない範囲で交渉すること。
レバー3:当座貸越枠の確保
銀行との関係で、当座貸越枠を確保しておく。いざという時にすぐに借りられる状態を作っておく。未使用でも枠を持っているだけで安心感が違う。
社会福祉法人の資金管理ルール
社会福祉法人には固有のルールがある。
- 基本金への組入
- 社会福祉充実残額の算定と活用計画
- 介護事業区分の明確化
- 一般会計との区分経理
これらを理解していないと、監査で指摘を受けるリスクがある。
経理担当者の要件
経理担当者には次の能力が求められる。
- 社会福祉法人会計基準の理解
- 介護報酬請求の実務
- 月次決算の早期化
- キャッシュフロー管理
- 税務(法人税非課税部分の区別)
1人専任で3年以上の経験が最低ライン。兼務では精度が保てない。
月次決算の早期化
月次決算は翌月10日までに完了させるのが理想。遅れると経営判断が後手に回る。早期化のポイント:
- 請求業務を月末までに完了
- 経費精算の締切を月末
- 仕訳入力のルール化
- 税理士との月次チェック
資金繰り悪化のサイン
次のサインが出たら要注意。
- 当座預金残高が2ヶ月分を下回る
- 支払いの遅延が発生
- 職員給与の支払いで冷や汗をかく
- 借入の利息負担が増えている
1つでも該当したら、即座に経営会議で対策を議論する。
次回は、特養の研修体系と教育投資を解説する。