
特養2026-04-07
業務委託契約の交渉術:清掃・リネン・調理の費用を15%削減した実例
特養の業務委託契約(清掃・リネン・調理)は、年間2,000〜4,000万円の規模になる。しかし「長年同じ業者」「契約内容を見直していない」施設が大半だ。本稿では、業務委託費を15%削減した実例から、交渉の3手法を解説する。
委託費の全体像
50床特養の典型的な委託費内訳:
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 調理・給食委託 | 3,000万円 |
| 清掃委託 | 500万円 |
| リネン・寝具 | 300万円 |
| 警備 | 200万円 |
| その他 | 500万円 |
| 合計 | 4,500万円 |
ここを15%削減できれば年額675万円の改善。経常利益率1.4ポイント分の効果である。
手法1:相見積もりを「取って終わり」にしない
相見積もりはほとんどの施設が取る。しかし「取ったまま現行業者に見せない」のが大半だ。これでは意味がない。
正しい進め方:
- 現行業者に「見直しを検討しています」と伝える
- 2〜3社から見積もりを取る
- 現行業者に「他社はこの条件です」と具体的な数字を見せる
- 現行業者からの対案を引き出す
相手に「本気」と伝わらないと値段は動かない。
手法2:契約条件を細かく見直す
見積もりの金額だけでなく、次の条件を細かく見直す。
- 契約期間(1年→2年で割引)
- 支払サイト(30日→45日で若干の割引)
- 業務範囲(やっていない業務が含まれていないか)
- 深夜・休日対応の追加料金
- 物価スライド条項
- 解約条項
「契約書を10年読んでいない」施設は、ほぼ間違いなく無駄が含まれている。
手法3:スコープの再定義
委託業務の中で「本当に必要か」を問い直す。例えば清掃委託で:
- 居室清掃は本当に毎日必要か(週3回で十分な施設もある)
- 共用部清掃の範囲は適切か
- 特別清掃(ワックス等)の頻度は妥当か
スコープを縮小すれば費用が下がる。「やらない」判断が最大の削減効果を生む。
削減の実例
埼玉のA特養(50床)の削減実績。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 | 削減 |
|---|---|---|---|
| 調理委託 | 3,200万 | 2,900万 | -300万 |
| 清掃 | 520万 | 430万 | -90万 |
| リネン | 310万 | 280万 | -30万 |
| 合計 | 4,030万 | 3,610万 | -420万 |
10%強の削減を実現した。やったことは上記3手法だけ。交渉開始から契約更新まで4ヶ月の期間をかけた。
失敗しない交渉の進め方
- 情報収集(1ヶ月目):相見積もり、相場調査、契約書の読み込み
- 方針決定(2ヶ月目):経営会議で削減目標を設定
- 交渉(3ヶ月目):現行業者・他社との複数回交渉
- 契約更新(4ヶ月目):最終合意、契約書の調印
「今回の更新では見直す」と期限を決めるのがコツ。漫然と交渉すると、何も変わらない。
委託先との関係を壊さない
値段交渉をすると「関係が壊れる」と心配する施設長は多い。しかし、合理的な数字に基づく交渉は、むしろ業者からの信頼を得る。業者も「管理が甘い施設」より「管理が厳しい施設」の方を大切にする。
2026年以降の物価上昇
物価高で業者側も値上げ圧力を受けている。毎年3〜5%の値上げ要求は今後も続く。何も対策しない施設は、毎年勝手に費用が膨張していく。定期的な見直しを経営会議の議題に入れ、仕組み化することが重要だ。
次回は、嘱託医契約の更新時のポイントを解説する。