
法人本部と現場の情報伝達を機能させる:伝言ゲームを防ぐ3階層構造
「本部から言われたことと現場の認識が違う」——複数施設を持つ社福法人の宿命的な問題だ。本部は指示したつもり、現場は聞いていない、理事長は現場が動いていないと怒る。この三重の認識ズレを解消するには、情報伝達の構造そのものを設計する必要がある。
伝言ゲームの構造
情報伝達が失敗する3つのパターン。
- 下りの伝言:理事長→事務局長→施設長→主任→現場職員。5段階を経るうちに3割削ぎ落とされる
- 上りの伝言:現場職員→主任→施設長→事務局長→理事長。現場の声が届かない
- 横の伝言:施設A→施設B。他施設の成功事例が共有されない
3階層構造の設計
推奨は戦略層・管理層・実行層の3階層構造。
- 戦略層:理事長・理事・事務局長
- 管理層:各施設長・事務長
- 実行層:主任・現場職員
情報は階層間を週次の定例会議で必ず橋渡しされる設計にする。
週次リズムの設計
月曜:管理層会議(60分)
全施設の施設長が参加。先週の実績・今週の予定・共通課題を共有する。Zoom等のオンラインで十分。議事録は24時間以内に全施設長に配布。
火曜:施設内朝礼(15分)
管理層会議の内容を、施設長が実行層に伝達する。重要なのは**「本部から言われた」ではなく「施設として決めたこと」として伝える**こと。現場の当事者意識が変わる。
木曜:実行層フィードバック(30分)
現場から主任へ、主任から施設長への報告の場。ここで出た課題は翌週月曜の管理層会議で議題化する。
金曜:戦略層レビュー(30分)
事務局長が理事長に1週間の動きを報告。数字と現場感を両輪で伝える。
週次リズムを崩さないことが、組織運営の根幹だ。
情報共有ツールの選定
多くの法人がLINEやメールを使っているが、情報が流れて検索できない。推奨はSlack・Teams・Chatworkなどのビジネスチャット。チャンネルを以下のように分ける。
- #施設全体連絡
- #管理層
- #実行層
- #事故報告
- #家族対応相談
プライベートメッセージではなくチャンネル利用を原則にすると、誰が何を言ったか透明化される。
ドキュメントの置き場
「どこに何があるか分からない」問題は、Google DriveやSharePointで解決する。フォルダ構造を全法人統一にする。
/法人共通
/規程類
/会議議事録
/研修資料
/施設別
/A施設
/B施設
全職員がアクセスできるのが原則。権限を絞りすぎると情報が死蔵される。
本部出張の機能設計
本部スタッフが現場に出向く機会を月1回設ける。目的は「現場の雰囲気を感じること」であって、指示を出すことではない。ここを勘違いすると、本部の訪問が現場にとってストレスになる。
訪問時のルール:
- 作業の邪魔をしない
- 10分は現場職員と雑談
- 施設長面談で課題を吸い上げる
- 次回までのアクション1つだけ決める
失敗する本部の3特徴
情報伝達が機能していない本部の共通点。
- メールだけで指示を送る(口頭・対面がない)
- 数字しか見ない(現場感がない)
- 成功事例の横展開をしない(他施設の学びが活かされない)
これらを逆にすれば、本部は現場から信頼される存在になる。
次回は、実地指導の準備を解説する。