配置医師緊急時対応加算とは何か

配置医師緊急時対応加算は、特別養護老人ホームに配置されている医師が、入所者の急変時などに施設の求めに応じて早朝・夜間または深夜に訪問診療を行った場合に算定できる加算です。現行の単位数は早朝・夜間が650単位、深夜が1300単位となっており、施設にとっては夜間の医療対応力を高める重要な収益項目のひとつです。

ただし算定するには、配置医師との間で緊急時の連絡体制をあらかじめ取り決めておくこと、実際の対応内容を記録として残すことなど、複数の要件を満たす必要があります。この要件が実務上のハードルとなり、算定率が伸び悩んでいるのが現状です。

なぜ配置医師緊急時対応加算の算定率は低いのか

介護給付費分科会の資料でも、緊急時対応加算の算定率は他の医療連携系加算と比べて低水準にとどまっていることが繰り返し指摘されています。主な要因は次の3つに整理できます。

  1. 配置医師が1名体制の施設が多く、夜間の呼び出しに応じられる医師が限られる
  2. 緊急時の連絡フローが口頭運用にとどまり、記録として残らないケースがある
  3. 訪問診療そのものが困難な地域で、配置医師の移動時間が確保できない

特に地方部の施設では、配置医師が複数の施設を兼務していることも多く、夜間の緊急対応そのものが物理的に難しいという構造的な課題があります。

2026年改定で見直される算定要件とは何か

2026年度の介護報酬改定では、配置医師緊急時対応加算について次の方向性で見直しが検討されています。

オンライン診療の活用をどう位置づけるか

最大の焦点は、D to P with N型のオンライン診療、つまり訪問看護師が入所者に同席する形での医師によるオンライン診療を、緊急時対応の手段として明確に位置づけるかどうかです。対面での訪問が難しい状況でも、看護職員が現場でバイタル測定や状態観察を行い、医師がオンラインで診療判断を下す体制を評価する方向で議論が進んでいます。

連携記録のデジタル化をどう求めるか

もう一つの見直しポイントは、緊急時対応の記録方法です。従来は紙媒体での記録が中心でしたが、実地指導や監査での確認負担を減らすため、電子的な記録システムを用いた連携記録の保存が推奨される流れにあります。記録項目としては、対応日時、対応内容、指示内容、事後の状態変化の4点が最低限求められる見込みです。

配置医師の複数体制要件をどう緩和するか

配置医師が1名しかいない施設への配慮として、近隣医療機関との協力体制やオンライン診療事業者との契約によって代替できる仕組みが検討されています。これにより、配置医師が不在の時間帯でも一定の医療対応が可能になることが期待されます。

現行要件と改定後の方向性を比較する

項目現行2026年改定の方向性
対応手段訪問診療が基本オンライン診療(D to P with N)も選択肢化
記録方法紙記録が中心電子記録の活用を推奨
医師体制配置医師本人の対応が前提近隣医療機関との連携で代替可能に
算定単位早朝夜間650単位、深夜1300単位単位数自体の見直しは限定的と想定

単位数の大幅な引き上げよりも、算定できる施設の裾野を広げる方向での見直しが中心になる点は押さえておく必要があります。

算定要件を満たすために何を整備すべきか

2026年改定を見据えて、施設側が今から準備しておくべき項目を整理します。

チェックリスト

  • 配置医師との緊急時連絡体制を書面で取り決めているか
  • 配置医師が対応できない時間帯の代替手段(近隣医療機関、オンライン診療事業者)を確保しているか
  • 緊急時対応の記録テンプレートを整備し、対応日時・内容・指示・事後経過を必ず記載しているか
  • 夜間当直の看護職員が緊急時対応の連絡フローを正しく理解しているか
  • オンライン診療を導入する場合、通信環境と機材の整備、同意取得の手順を確認しているか
  • 過去1年分の緊急時対応記録を振り返り、算定漏れがないか棚卸ししているか

特に記録テンプレートの整備は、実地指導での指摘を防ぐうえでも効果的です。対応の都度、同じフォーマットで記録を残す運用にしておくことで、算定根拠の説明がしやすくなります。

算定漏れ・返還リスクをどう防ぐか

緊急時対応加算は、算定要件の解釈が曖昧なまま運用されているケースが少なくありません。特に次の点は返還リスクにつながりやすいため注意が必要です。

  • 電話での指示のみで訪問を伴わない対応を、加算対象として計上していないか
  • 配置医師との取り決め書面が更新されないまま、担当医師が交代していないか
  • 記録に対応時刻の記載がなく、早朝・夜間・深夜の区分が判断できない状態になっていないか

監査や実地指導では、記録の整合性が最も厳しく確認される項目です。日頃から記録の質を高めておくことが、結果的に算定率の向上にもつながります。

まとめ

配置医師緊急時対応加算は、特養における夜間医療対応の要となる加算でありながら、体制面のハードルから算定率が伸び悩んできました。2026年改定では、オンライン診療の活用や記録のデジタル化、配置医師体制の柔軟化が見直しの中心になると見込まれます。施設としては、単位数の変化を待つだけでなく、連携体制と記録運用を今のうちに整備し、改定後にスムーズに対応できる準備を進めておくことが重要です。