
認知症ケア加算IIIとは?加算IIとの違いを徹底解説
TL;DR
2024年度介護報酬改定で認知症ケア加算IIIが新設され、従来の加算IIより要件が緩和されました。加算IIIは月額20単位、加算IIは月額60単位で、配置要件や研修要件に違いがあります。グループホームの現状に合わせた加算選択が重要です。
認知症ケア加算IIIはなぜ新設されたのか?
2024年度介護報酬改定において、認知症ケア加算IIIが新たに創設されました。この背景には、既存の認知症ケア加算IIの算定率の低さがあります。
厚生労働省の調査によると、認知症ケア加算IIの算定率は以下の通りです。
| サービス種別 | 算定率 |
|---|---|
| 認知症対応型共同生活介護 | 28.5% |
| 小規模多機能型居宅介護 | 15.2% |
| 認知症対応型通所介護 | 22.1% |
算定率の低さの主な要因として、以下が挙げられています。
- 看護師等の配置要件が厳しい
- 研修要件が複雑
- 小規模事業所での人材確保の困難
これらの課題を受けて、より算定しやすい認知症ケア加算IIIが新設されました。
認知症ケア加算IIとIIIの基本情報
単位数の比較
| 加算種別 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 認知症ケア加算II | 60単位 | 月額 |
| 認知症ケア加算III | 20単位 | 月額 |
認知症ケア加算IIIは、加算IIの3分の1の単位数設定となっています。
対象サービス
両加算とも以下のサービスで算定可能です。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型通所介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
算定要件の詳細比較
人員配置要件の違い
認知症ケア加算II
- 看護師、准看護師、保健師又は助産師のいずれかを配置
- 認知症介護実践リーダー研修修了者を配置
- 認知症介護指導者養成研修修了者又は認知症介護実践リーダー研修修了者が事業所全体の認知症ケアの指導を実施
認知症ケア加算III
- 看護師等の配置要件なし
- 認知症介護実践リーダー研修修了者を配置
- 認知症介護指導者養成研修修了者又は認知症介護実践リーダー研修修了者が事業所全体の認知症ケアの指導を実施
研修要件の比較
共通要件
- 認知症介護実践リーダー研修修了者の配置
- 認知症介護基礎研修の受講(介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者)
- 認知症介護実践者研修又は認知症介護実践リーダー研修の修了(介護職員の60%以上)
追加要件(認知症ケア加算IIのみ)
- 看護師等の専門職配置
- より高度な医学的ケアの提供体制
ケア提供体制の要件
共通要件
- 認知症の行動・心理症状が認められることから在宅生活が困難となった者を受け入れる体制を整備
- 法人として地域密着型サービス又は居宅サービスを2種類以上実施
- 個別の認知症ケアに関する計画を策定
- 地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設等との連携体制を確保
記録・報告要件
両加算とも以下の要件があります。
- 認知症ケアに関する記録の作成・保管
- 市町村への実施状況報告
- 家族等への説明・同意
算定シミュレーション
月間利用者30名のグループホームの場合
認知症ケア加算II算定時
- 月額収入:60単位 × 30名 = 1,800単位
- 年間収入:1,800単位 × 12ヶ月 = 21,600単位
- 金額換算(1単位10円):216,000円/年
認知症ケア加算III算定時
- 月額収入:20単位 × 30名 = 600単位
- 年間収入:600単位 × 12ヶ月 = 7,200単位
- 金額換算(1単位10円):72,000円/年
差額と投資対効果
年間差額:216,000円 - 72,000円 = 144,000円
看護師等の人件費を年間200万円と仮定した場合、認知症ケア加算IIの増収分だけでは人件費をカバーできません。ただし、看護師配置による以下のメリットも考慮する必要があります。
- 利用者の健康管理向上
- 医療連携の強化
- 家族満足度の向上
- 緊急時対応力の向上
選択基準とポイント
認知症ケア加算IIIを選択すべき事業所
以下のような事業所には認知症ケア加算IIIが適しています。
人員体制の観点
- 看護師等の確保が困難
- 小規模事業所で人件費負担が大きい
- 既存職員での算定を希望
経営戦略の観点
- 段階的な加算取得を目指す
- リスクを抑えた収益向上を図りたい
- 将来的な加算II移行を検討
認知症ケア加算IIを維持・新規取得すべき事業所
人員体制の観点
- 看護師等が既に配置済み
- 医療的ケアのニーズが高い利用者が多い
- 職員の専門性向上に積極的
経営戦略の観点
- 高単価での収益確保が必要
- 地域での差別化を図りたい
- 医療連携を強化したい
算定開始までのスケジュール
認知症ケア加算III算定開始の流れ
準備期間:3-6ヶ月
-
月目:現状分析・計画策定
- 職員の研修受講状況確認
- 必要な研修の洗い出し
- 算定計画の策定
-
月目:研修受講開始
- 認知症介護基礎研修の受講(未受講者)
- 認知症介護実践者研修の受講計画策定
-
月目:体制整備
- 認知症ケア計画策定体制の構築
- 連携体制の確認・構築
- 記録様式の整備
4-6. 月目:最終準備
- 職員研修の完了
- 必要書類の準備
- 市町村への届出準備
必要な届出書類
- 体制届出書
- 職員の資格証明書写し
- 研修修了証明書写し
- 連携体制に関する協定書等
- 認知症ケア実施計画書(様式例)
よくある算定上の注意点
算定停止となるケース
以下の場合、加算算定を停止する必要があります。
- 配置要件を満たす職員の退職
- 研修要件を満たす職員の離職
- 連携体制の解消
- 市町村への報告義務の不履行
算定継続のポイント
人員確保の対策
- 複数職員での要件充足
- 計画的な研修受講
- 代替職員の育成
記録・報告の管理
- 定期的な記録確認
- 報告期限の管理システム化
- チェックリストの活用
まとめ
認知症ケア加算IIIの新設により、グループホーム事業所にとって認知症ケア加算の算定ハードルが下がりました。単位数は低いものの、段階的な取組みや小規模事業所での算定開始には有効な選択肢といえます。
事業所の現状と将来計画を踏まえ、適切な加算選択を行うことが重要です。まずは算定可能性の検討から始め、必要に応じて専門家への相談も活用しながら、計画的な取組みを進めることをお勧めします。